読書尚友

先人の叡智を自分の行動に落とし込んで、成長と成果に変えていくブログ。焼きたてのトーストにバターを塗るように、日々の学びを薄く薄く伸ばして染み込ませてゆく

効率的な学習方法は? 『だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法』池谷 裕二 著①

 

今日の読書日記は『だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法』から、記憶の仕組みと学習方法についてのメモ。

 

 

 

→(矢印)は本文の内容。

*(アスタリスク)は感想。

 

 

1.記憶は海馬で製造、大脳皮質に保管

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→脳にはそれぞれの部位で役割分担がある。記憶は脳の「海馬」で作られる。

 海馬で作られた記憶は、「大脳皮質」に保管される。

 

(脳における記憶の分業システム)

 

☆情報☆―――――→<海 馬>――――――――→<大脳皮質>に保管

            |   (必要な情報)

            |

         (不要な情報)

            |

            ↓

           廃 棄

 

→脳に入ってきた大量の情報はまず海馬に集まる。どの情報が必要・不必要か

 じっくり検討されたのち、必要であるとされた情報が大脳皮質に保管される。

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2.二ヶ月間に四回の復習がベスト

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→脳には常に莫大な情報が入ってくるため、なるべく多くを忘れるように設計

 されている。海馬に集まった情報のほとんどは廃棄される。海馬は「情報の

 ふるい」の役割をしている。記憶する必要のある重要なものだけを取捨選択

 して、大脳皮質に送っている。

 

→ということは、勉強で記憶しなければいけない知識は、なんとかして海馬に

 「これは大切な情報だ」と思ってもらわなければならない。脳では「生きる

 ために必要な情報」が優先される。

 

→学校の知識は「これは不要な情報だ」と海馬に捨てられてしまう。つまり、

 脳に記憶させるためには、どんな手段を使っても「海馬」という関所を通過

 させなければならない。「これは重要なのだ」と海馬に勘違いさせなければ

 いけない。

 

→最も簡単で確実に勘違いさせる方法は、何度も繰り返して、同じ情報を海馬に

 送ること。つまり復習。

 

→復習にもタイミングがある。海馬に情報がとどまっている期間はどんなに

 長くても一ヶ月だからである。海馬は情報を一ヶ月かけて吟味し、本当に必要な

 ものをじっくりと選定している。

 

→この一ヶ月間に繰り返し復習すれば、海馬は「こんなに何度も送られてくる

 情報は、大切なものだろう」と勘違いしてくれる。復習する際には、海馬に

 より多くの情報を送ったほうが勘違いしてくれる確率が高くなる。手で書いたり

 声に出したりして、できる限り多くの五感を動員すること。

 

→海馬の性質からの能率的な復習スケジュールは、学習した翌日に1回目、

 そして1週間後に2回目、次に2回目の復習から2週間後に3回目、

 最後に三回目の復習から一ヶ月後に4回目がベスト。

 4回の復習を少しずつ時間間隔を広げながら二ヶ月かけて行う。

 これが海馬にその情報を必要と判断させるコツ。

 

→これ以上に復習を過密にして、労力を費やす必要もない。筋力トレーニングと

 同様、必要以上にやっても成果は変わらない。

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3.六時間以上の睡眠が学習の鉄則

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→何か新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日のうちに6時間

 以上眠ることが欠かせない。一睡もしないで詰め込んだ情報は、海馬に

 あっさりと捨てられてしまうため、数日のうちに脳から消えてしまう。

 

→記憶は脳に長くとどまってこそ意味のあるものとなる。「学習の転移」も

 「精緻化」も記憶が長期的に脳に蓄えられなければ、まったく効果が現われない。

 なるべく睡眠時間を削らなくて済むような計画的な学習を心がけないといけない。

 

→眠らないと海馬が情報を捨ててしまう秘密は「夢」にある。

 夢を見ているときに海馬は活発に活動している。夢は一種の「記憶」の再生であり、

 海馬の情報や、大脳皮質の記憶が夢の中で再現される。

 

→夢を見ることとは、脳にある情報や記憶の断片を、あれこれと繋ぎ合わせて

 試行錯誤する行為。脳は、睡眠中にさまざまな形で過去の記憶や情報の組み合わせ

の整合性を検討し、整理している。寝ないということは、海馬に情報を整える時間を

与えないということ。整理整頓できないような情報は、海馬は不要であると判断して

即座に捨ててしまう。

 

→つまり寝ることは、ものごとをしっかりと覚えるうえで、とても大切な行為である。

 テスト前の徹夜は、記憶にとって非常に好ましくない。貴重な睡眠時間を削って

 まで知識を吸収しようと試みるのは逆効果である。記憶できる範囲だけ、理解できる

 範囲だけを確実に覚えること。できることだけをしっかりやって、寝る。後は、

 海馬の頑張りに期待するだけ。これが学習の鉄則。

 

*学生時代、大事な試験の前日に徹夜したことがあるが結果はやはり悪かった

 ことを思い出した。直前の勉強よりも睡眠を優先しよう。

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4.毎日コツコツ少しずつが能率的

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→学習したことが少し時間がたつと、高度化するという現象(レミニセンス)。

 夢を見ると記憶は自然に成長する。これは、寝ている間に記憶が整理整頓され、

 その後の学習を促進させた結果である。例えば、ピアノのレッスンで、どんなに

 練習してもうまく弾けない部分が、あきらめて寝た翌日にピアノに向かったら

 すんなり弾けたなど。

 

 

→学習したことがレミニセンスによって十分な効果を発揮するには、ある程度の

 時間が必要。直前に詰め込んだ知識は、覚えてから数日たったほうが、脳にとって

 利用しやすくなっている。時間が記憶を成熟させる。

 

→となれば、1日6時間まとめて勉強するより、睡眠をはさんで、3日に分けて

 2時間ずつ勉強したほうが能率的。毎日コツコツ少しずつが学習計画を立てる

 うえで大切。

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5.復習が記憶のメカニズムを活性化

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→海馬に細い電極を指して、繰り返し刺激すると、神経細胞同士の結びつきが

 強くなる。しかも、刺激のあと、数日から数週間、ずっと結合度が増強した

 ままになる。この長期的に神経細胞が活性化される現象を「長期増強(Long-

 term potentiation)」、イニシャルをとってLTPと呼ぶ。

 

→海馬を1回刺激しただけではLTPは起こらない。海馬の神経細胞そのものが、

 繰り返しの刺激を必要としている。神経細胞自体の性質がそうなのだから、

 繰り返し復習することが学習の鉄則である。

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6.復習の回数を少なくする方法

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→簡単にLTPが起こせる、つまり復習の回数を少なく済ませる方法が2つある。

 1つ目は、刺激を「シータ波」の出ている状態で与えること。シータ波とは、

 「脳波」の1つで、新しいものに出会ったり、初めての場所に行ったりして、

 あれこれと探索しているときに生じる。反対に、飽きたりマンネリ化して

 気持ちが散漫になっていると、シータ波は発生しない。興味を持ってものごとを

 見つめたり考えたりするときにのみシータ波が出る。

 

→シータ波が出ている時には、少ない刺激の回数でLTPが起こる。言い換えれば、

 興味を持っているものごとは簡単に覚えられる。すきな歌手の曲の歌詞や、

 ひいきのスポーツチームの選手名などは、学校の勉強に比べてずっと楽に

 覚えられる。

 

→このように、脳科学的に見ても、覚えたい対象に興味を持つことの重要性が分かる。

 初めは勉強がつまらないと感じたとしても、しばらくは我慢して続けてみること。

 そのうちに、脳が自然とシータ波を出すようになる。その時には、復習の回数が

 少なくて済むようになっている。

 

→道端に花の咲いた通りを歩く人を3通りに分類できる。花に全く気付かない人。

 ただ花が咲いている、と思うだけの人。キレイだなあと感動する人。感動を

 いつまでも忘れない子どものような心、シータ波を生み出す「童心」が勉強に

 おいては大切。

 

*キーワードは「童心」。

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7.喜怒哀楽が記憶を促進させる

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→少ない刺激回数でLTPを起こす2つ目の方法は、「扁桃体」という場所の神経細胞

 を活動させること。扁桃体は海馬のすぐ隣りにある脳部位で、喜怒哀楽などの

 さまざまな感情を生じさせる。つまり、喜怒哀楽などの感情が生まれている時には

 ものごとが覚えやすい。過去のことでよく覚えていることは、うれしかったり、

 悲しかったり、何らかの感情が絡んでいることが多い。これら「思い出」と

呼ばれるものの実体は、扁桃体が活動してLTPが起きやすくなっていたということ。

 

*これも初めて知った。

 

→「思い出」が深く刻み込まれる理由は進化の過程で人間が野山を走り回って

 いた頃のことを想定すると分かる。動物は体験した恐怖をきちんと脳に記憶

 して、次に同じような状況が巡ってきたときに、効率よく危険を回避しなければ

 ならない。これは動物の生死を分ける重大な問題であり、生き残るための作戦こそ

 が、感情による記憶の促進である。

 

→進化の過程で培われたこの特殊な記憶力は、今になっても人間の脳に痕跡として

 残っている。だから、人間の脳は感情が絡んだものごとを強く覚えようとする。

 こうした記憶は1回で覚えられ、かつ、とても強固である。あまりにもその記憶が

 強いとトラウマになることもある。

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8.シータ波と扁桃体が効率化のカギ

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→勉強において扁桃体を使った記憶力増強法を利用しない手はない。

 例えば、「1528年 本能寺の変」も機械的にそれを丸暗記するのではなく、

 家臣の明智光秀に裏切られて無念そうな織田信長の表情を頭に思い描き、

 さらに彼の死を、肉親を失ったかのように切実に受け止めれば、脳は素直に

 この知識を記憶しようとする。

 

→何千万年もの進化の過程で、自然淘汰されてきた記憶のこの性質を利用する

 ことは、生物学的にも理にかなったもので、脳への負担も少ない方法である。

 

→強いストレスはLTPを起こらなくさせるため、テスト直前の詰め込みなどは、

 難点がある。

 

→マンネリ化に注意して、適度な緊張感を保つこと。つまり、シータ波と扁桃体を

 うまく働かせて勉強に励むことが、学習効率を高めるコツ。

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9.生体の危機感を利用した学習は協力

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→適度の危機感を常に持ち続ける方法。例えば、生物にとって「空腹」は危機。

 お腹が空いているときのほうが、脳の記憶力は上昇する。また、食後は危機感

 が減少するだけではなく、胃や腸に血液が集中するため、頭脳の活動が

低下しがちになる。

 

→「室温」も危機感を煽るのに応用できる。動物は寒さに危機感を感じるため、

 室温は少し低めの方が学習効率が高まる。夏ならクーラーのよく効いた部屋で、

 冬なら暖房をあまり強くしないほうが良い。

 

→生態の危機感を利用した学習方法は、長い進化の過程で培われた性質を使って

 いるので、とても強力で有効な方法である。

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おわりに

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→学校の勉強で学ぶものは「知識記憶」だけでなく、「方法記憶」も同時に

 習得している。方法記憶は、天才的な能力を育てる「魔法の記憶」である。

 すべてのものごとの見通しを良くして、総合的な理解力、判断力、応用力を

 高めることができる。人生のさまざまな局面で、社会、家庭、娯楽、仕事、

 人間関係などをより豊かにする秘訣こそが方法記憶である。

 

→方法記憶の習得のために絶対に欠かせないのは、「繰り返す努力」と

 「めげない根気」である。努力と根気を持ってことに臨めば、能力は

「累乗」の関数で伸びる。こうした効果は誰の脳にでも約束されている。

 

→できる人とできない人の差は、勉強のスタート時のちょっとした意欲の差。

 より上を目指すのであれば、劣等感やうぬぼれを排除し、今の自分の姿を

 しっかりと見つめて、自分が何をすべきなのかをはっきりと認識すること。

 勉強に関しては、きちんと努力すれば裏切られることは決してない。

 

→学習は勉強時間が重要なのではなく、大切なことは勉強の効率である。

 効率よく勉強して、成果をあげ、余った時間は自分のために上手に使い、

 彩りのある人生を送ろう。