エンジニアが身に付けておくべきことは? 読書日記『10年後、生き残る理系の条件』竹内健 著①
今日の読書日記は『10年後、生き残る理系の条件』から、エンジニアが能力を高め、世の中に貢献するための方法について。
今の時代、様々な分野の知識を横断的に駆使することが、エンジニアにも求められるようになってきています。そこで必要なのが、「T字型人間」になるという意識です。「T字」の縦の線、つまり深い専門性はエンジニアの皆さんなら既にお持ちでしょう。さらに、横の線、技術を活かすための幅広い知識があれば、エンジニアの能力を活かせる場が一気に広がるでしょう。「AxB」という能力のうち、Tの字の縦の棒が最初に述べた確率、統計、物理、化学などの普遍的なスキルおよび専門分野のスキルA、横の棒が技術を活かすためのスキルBです。
専門性と視野の広さの両方が必要になっていますが、習得する順番は重要です。あくまでも、最初に専門性(A)、次に幅広い知識(B)です。
複数の専門分野をカバーすることは重要ですが、そのためには最初に一つの分野の専門を深める過程を経ることが必要です。
最初に専門知識を身に付けるときは試行錯誤ですが一つの分野の専門知識を身に付けたら、その後、他の分野の専門知識を学ぶときには、最初よりもはるかに容易になります。
数学や物理、化学などはいわゆる「普遍的スキル」であり、後々自分の財産になります。そもそも世の中を支配している原理原則に、それほどバリエーションがあるわけではありません。数学や物理、化学などの基礎学問は、様々な分野に応用が利きます。
先端分野の技術は高度化が進んでおり、そこに専念しなければ置いていかれるという気持ちがあるかもしれません。しかし、繰り返し述べているように、それだけで生き残ることができれば素晴らしいことですが、必要とされる技術など、入れ替わってしまうことも多いのです。
ですから、一つの分野について十分に深く「穴を掘った」と思ったら、「横に広げる」ことにも関心を持ってください。
人がどのような新しい経験に価値を感じるかを理解するには、サービスを実現する手段である専門的な技術の知識と、いわゆるリベラルアーツ、社会科学や人文科学の知識を総動員することが必要になります。
これから求められるエンジニア像は、専門的な技術力が前提条件にはなりますが、
・実験室にこもっているのではなく、様々な人と接し、社会の多様な側面と接してきた人
・若いころから、社会の様々な出来事に興味を持ち、技術以外の多様な分野の本を読んだり、芸術に触れたりしてきた人
といえるでしょう。
ジョブズの伝記によると、「リベラルアーツとテクノロジーの交差点に新しい価値が生まれる」とジョブズが言っていたそうですが、これはあらゆる研究者、エンジニアが肝に銘じておくべきことではないでしょうか。
私もエンジニアとして仕事をしているため、非常に興味深く読みました。エンジニアが自分が専門とする分野を極めようとする意識を持つのは当然のことなのですが、日常の仕事においては、極めて狭いコミュニティの中で仕事をしています。
実験室とPCの置いてある自分の机の間の往復で仕事が完結してしまうのが日常です。たまに学会やセミナーなどで社外に出ることはありますが、そこで出会う人達は当たり前ですが、「自分と同じ」業界の方ばかりです。
これはある意味、居心地がいいと言えなくもありませんが、やはり、モノの見方、考え方という意味では、広がりに欠けているものだと思います。また、その特定の分野の専門用語が当たり前に通じることを前提にしたコミュニティの中に身を置いています。それに慣れきってしまうと、自分の専門分野について全く知らない人などに仕事の内容について説明することが難しいと感じたりします。
深く、深く、専門分野を掘ることは必要です。ただ、それに集中しすぎると、近視眼的になり、世の中の流れの中で自分の開発している技術がどのような位置づけにあり、一体それにより何が実現できるのか、といったことに対する注意を怠ってしまうことがあります。その結果、当初の目的を忘れてしまい、悪く言えば、ただの自己満足、開発のための開発を行っている、という事態にもなりかねません。
私の場合は、最初に所属していた自分の専門分野に関する事業部が、リーマンショックの起きたあたりで大きな赤字を出して、会社の業績の足を引っ張るお荷物部門となってしまいました。その部門は最終的には同業他社に売却されることになりました。
それに前後して、自分の専門とは全く異なる分野の業務の部署、やや近い分野の業務の部署などへの異動を経験しました。他にも異動は複数回経験していますが、その度にエンジニアとして担当する仕事の内容は変わっています。
この経歴にはメリットもデメリットもあります。
メリットとしては、
・同一分野においていろいろな業務、職場を経験したことで、自分の専門としていた分野について多面的な視点を確保することができたこと
・全く専門外の業務を経験したことで、未知の分野、領域に飛び込むことに対する抵抗や恐怖心が小さくなったこと
などです。
一方でデメリットとしては、
・ある特定の専門分野の仕事、職場、一筋でやってきた人には敵わない
ということです。
私は「何かの分野でプロフェッショナル」になる、ということに強く憧れています。ただ、これまでのキャリア的に、例えば私の元々の専門分野のような一つの分野を極める、ということは今となっては少し難しいかもしれません。従って、分野、業界を「越境」して、そこに自分のポジション、活路を見出していきたいと考えています。
そのためには、逆説的ですが、今の仕事に対する学習、深堀をしっかり行っていかないといけません。それと同時に、「今」、あるいは、「これから」の世の中で何が必要とされるのか、自分の保有するスキルの何が役立てられそうかを見極めていく必要があると感じています。
「T字型」の「縦棒」を深く掘りつつ、かつ、その数を増やしつつ、「横棒」を四方八方に伸ばして張り巡らせていけば、最早「T字」の原型を留めてはいませんが、何かの「新しい価値」にぶち当たることは間違いありません。私がこれからやりたいと考えているのは、そういうことなのだと思います。
〈今日のチャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい
・10年後ももっと先も、生き残るために
今やるべきことを知りたい
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・エンジニアこそがゼロから価値を生み出すことが
できる、という考え方に勇気づけられた
・リスクをとって先陣を切ることで
突破口を開き、みんなにパイを運ぶことが
できる、それにより経済が拡大する、
という考え方が気に入った
・ウォーレン・バフェットが仕事の80%の時間を
「読んで考える」ことに費やしている、ということ
に驚いた
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・まずは「T字型」になるべく、普遍的なスキルと
現在の専門分野の習得に励む
・家族サービスと合わせて美術館に行くなどして、
教養を学ぶ
・Twitterを試してみる
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・自分の保有しているスキルのT字型を誰に対しても
分かりやすく説明できるようになっている
・同時に今後伸ばしていきたいスキルも
明確になっている
・自分のスキルを活かすことができそうな異業界、
異分野を3つ発見している
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