思考停止を防ぐには? 読書日記『スーパーヒューマン誕生!人間はSFを超える』稲見昌彦 著
スーパーヒューマン誕生! 人間はSFを超える (NHK出版新書)
- 作者: 稲見昌彦
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2016/02/09
- メディア: 新書
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今日の読書日記は、『スーパーヒューマン誕生!人間はSFを超える』から、AIとの同期と思考停止について。
近年、ディープラーニングをはじめとする人工知能(AI)のブレイクスルー技術が登場したことで、人間を機械が超えるという話が盛んになされるようになった。
二〇二九年、人工知能が人間を超えるという、レイ・カーツワイルが唱える「シンギュラリティ」という思想が現実味が増してきた。
人工知能の目覚ましい進展を見れば、たしかに人間の能力をコンピュータは超えるかもしれない。しかし、その一方で、何のために人間がいて、何のために身体があるのかを考える必要がある。
答えはシンプルだ。人間が自らの意志でしたいことは、人間にしかできないのである。
人間がしたくないことを人工知能に任せて「自動化」するということには私も反対しない。そのほうが幸せなことが多いだろう。
一方で、人間の能力を拡張して「自在化」することも必要だ。
例えば、パソコンやスマートフォンの日本語入力システムだ。AIが人間の入力したい言葉だろうと予測して、人間がタイピングするたびに表示してくれる。
予測による変換候補から言葉を選ぶことで、入力のスピードは格段に上がる。人間がそれをAIだと感じずに、自分が入力しているのだと感じるような「透明なAI」こそ、自動化ではなく人機一体による自在化のいい例である。
では、人間の身体の内側と外側の両方にコントローラブルな領域を広げ、人機一体となり自在化を実現していくためには何が必要だろうか。
それを知るためには、私たちの身体がどのような役割を果たしているのか、また人間の脳が身体を通してどのように外界とつながっているのかを探ることが近道だ。
暫定的な仮説だが、身体は脳と世界をシンク(同期)するためのインターフェイスである、というのが現在の私の身体観だ。
私たちは、自分の頭の中に現実感(リアリティ)という現実世界(リアル)のモデルをつくっている。
そのモデルの精度を上げ、更新するために、私たちの身体の五感というインターフェイスが存在しているのではないだろうか。
そして意志により現実感の未来のモデルを作り、それに現実世界を適合しようとする努力が身体運動であり、そのズレを私たちは「力」として感じている。
コミュニケーションも言語や身体動作を介して、双方の知識をシンクするための行動と捉えることができる。
〈今日のコンテンツ〉
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1. 透明なAI
2. 脳と身体をシンクする
3. まとめ
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1. 透明なAI
この本は、 着用すると自分の姿が周囲の風景に溶け込んでしまう「光学迷彩」を開発された東大の先生が書かれたものです。「光学迷彩」は、最近ハリウッドで映画化された『攻殻機動隊』という漫画やアニメで登場したものですね。
「光学迷彩」がどういうものか、というのは動画を見てもらうのが分かりやすいと思います。(約2分)
上記のような「光学迷彩」を含めて、本書の著者は「人間拡張工学」という学問を提唱されています。それによると、身体にも、情報世界にも制御できないものと調整できるものがあり、その制御可能な領域を身体の「内側」にも「外側」にも広げていこうとするもの、だそうです。
「人間拡張工学」は人間の制御できる範囲を「自在化」するものだと述べられています。ここで言う「自在化」とは、「思うがままにも、無意識も動かせる」ということだと定義されています。
近年、発展が著しい人工知能は、やがて「人間の仕事を奪い、人間の存在を脅かす」というような議論もなされています。
一方で、「人間の能力を拡張するもの」という視点で捉えると、「人間のできることを増やしてくれるもの」、という見方をすることも可能でしょう。
今回引用した部分に書かれているように、人間がしたくないこと、例えば単純作業や重労働などは、人工知能やロボットに任せてしまう。
その一方で、どれだけ手間がかかっても自分でやりたい事は人工知能によるサポートをあえて取り入れる必要はないわけです。特に「仕事」よりも「趣味」の領域ではこういったものが多いのではないかと思います。
人工知能に「任せる」ことで生み出された時間を、私たちが「本当にやりたいこと」に投入する。そうすると日々の充実感も増してくるでしょう。
人工知能を仕事に取り入れることで、意思決定のスピードが速くなり、また精度が高まり、生産性、効率性が高まる、というのは間違いないでしょう。
その一方で、人工知能を取り入れることで、「自分で考える力」が弱まる、という側面があることには注意が必要です。
人工知能による意思決定に基づき、行動した場合、その結果の責任の所在はどこにあるのか?というのは現在、盛んに議論されている問題です。
人工知能に大切な判断を丸投げしてしまって、私たちが「思考停止」に陥らないよう、その手前で踏みとどまることは非常に大切だと思います。
そうあるためには「考える力」というものを日々、磨いておく必要があります。
そして、その方法として「書く」というのは非常に有効な手段だと思います。
それは、「書き出せば思考は前に進んでいく」からです。頭の中で考えているだけでは思考は「堂々巡り」をしているだけのことが多いでしょう。
理想的には、AIの判断を元に自分が意思決定するよりも、まず、自分の判断があって、それをAIがサポートする。
そのような形式の方が、自分のコントロール感は失われにくい、つまり、「思考停止」状態にはなりにくいのではないでしょうか。
順番がとても大事ですね。そしてそのような状態であれば、人はAIの存在を感じにくい。つまり「透明なAI」の状態が実現されている、ということになります。
この方向性でAIを設計・利用するのであれば、「AIにとって代わられる」という事態の発生をいくらか抑制できるのではないか、という気もします。
2. 脳と身体をシンクする
本書の中には、私たちが「認識している世界」と「客観的な世界」は異なる、ということも述べられています。そして、そのズレを調整していくための「入出力装置」が私たちの身体だということです。
「シンク(同期)」というキーワードが登場していますが、私たちの人生はある意味、一生をかけて、ひたすら身の回りの客観的世界に対して、「自分の世界観」を調整していく、という行程でもあると思います。
自己啓発書を読むと、よく「将来の夢や目標を紙に書いてみよう!」ということが書かれています。
もちろん私も書いていますし、よく見返しているのですが、その理由は、自分の「脳」で描いた世界観に自分の「身体」をシンクさせていくため、ということになります。
「脳」が考える望ましい状態に対して「身体」がまだ、そこに到達していない。
その「ズレ」を身体に強く認識させることが、自分の活力を生み出し、行動を促すのだと思います。
あるべき状態と現状とのギャップにより感じる「違和感」とそれを埋めるための「調整」の繰り返しによって私たちは前に進んでいきます。
「シンク(同期)」という言葉からは、「調和した」、「重なり合った」、「一致した」、「境界線がない」というようなイメージが思い浮かびます。
それは先に出てきた、存在を感じさせない「透明なAI」というイメージとも重なるものです。
そう考えると「透明なAI」と、世界と自身の間の「世界観のズレ」をシンクし、調整することで生きている私たち「人間」とは、「共存できる」ということができそうです。
人間拡張工学の一例として「機械化」された身体、というものも、もちろん登場するのですが、最終的には私たちは、AIやロボット、人間という境界線を越えて「同期」する方向に進んでいくのかもしれません。
何故なら、その状態は私たち人間にとっても、AIやロボットに対して「違和感」を感じる状態ではなくなっているからです。
完全に同期してしまえば、最早、AIの判断と自分の判断の区別もないので「思考停止」という状態も起こらないでしょう。
そうであるとするならば、私たちが今こうして、将来のあり方、「AIに使われない生き方」について「考えること」さえも、結局無駄なことになってしまうのでしょうか?
考えは尽きません。またそのうち続きを考えてみたいと思います。
3. まとめ
・人間が自らの意志でやりたいことはAIに任せる必要がない
・AIによる思考停止を防ぐには考える力をつけること
・AIの在り方としては「透明なAI」の形が理想。ただしそうなった時、
人間とAIは同期しているかもしれない
〈今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい
・最先端のテクノロジーについて学ぶ
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・自分の知らない様々な事例について学ぶことができた
・読みたい本が複数見つかった
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・AIと共存するための方法について考えてみる
・書くことでAIに負けない思考力をつける
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・多様な分野のテクノロジーの開発状況について
人に分かりやすく説明できるようになっている
・現状よりも深く、広い思考力を身につけている
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