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先人の叡智を自分の行動に落とし込んで、成長と成果に変えていくブログ。焼きたてのトーストにバターを塗るように、日々の学びを薄く薄く伸ばして染み込ませてゆく

ゴールに向けて歩みを進めるために必要なものは?『「大発見」の思考法』山中伸弥, 益川敏英 著

 

「大発見」の思考法 (文春新書)

「大発見」の思考法 (文春新書)

 

 

 

益川

まさに二十一世紀の医療は、iPS細胞にかかっていると言っても過言ではない。実に幅広い可能性を秘めているんですね。

 

山中

ALSの患者さんの場合、全身の運動神経が侵されてしまいますから、治療のために全身にiPS細胞から作った運動神経を移植することは不可能です。しかし、ALSやパーキンソン病などの遺伝子の異常によって起きる難病の創薬にとって、iPS細胞は間違いなく大きなカギになります。

 

iPS細胞の研究で最も優先すべきことは、開発した技術から作りだした薬なり、細胞なりを、一日も早く患者さんのところへお届けすることです。一日遅れたら、その間に何人もの患者さんが亡くなっていくわけですから。動けない患者さん、治る見込みのない患者さんのもとに、一刻も早く薬をお届けしたい。

 

ただ、どういう病気が治せるか、といったことは、私達が簡単に言えることではありません。患者さんに過度の期待や失望を与えてしまう可能性を考えると、「まだそこまではわかりません」としか言えないのです。

 

しかし、iPS細胞を人の役に立てたいという気持ちは非常に強く持っています。私は臨床医としてはぜんぜん人の役に立ちませんでした。だから死ぬまでに、医者らしいことをしたいのです。

 

私に「医者になれ」と熱心に勧めてくれた父は、私が研修医二年目のときに病気で亡くなりました。どんどん症状が悪くなって手の施しようがなくなってしまったのですが、父は、私に点滴をしてもらって、ニコニコしながら死んでいったのです。息子が医者になったことが嬉しくて誇らしくてたまらない、というように……。

 

医者として人の役に立ったと自分で思えないと、死んだ父に対しても申し訳が立ちません。父が望んだ臨床からは離れてしまったけれど、基礎だからこそ治せない病気も治せるようになると、私は信じています。「あの世で親父と会う時、顔向けできない」なんてことがないように、残りの人生で自分に出来る限りの力と情熱を注ぎ込みたいと思っています。

 

 

〈今日のコンテンツ〉

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1. この本はどんな本か?

2. 駆り立てるもの

3. Vision & Hard work

4. まとめ

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1. この本はどんな本か?

 

2008年のノーベル物理学賞受賞者である益川敏英氏と、2012年のノーベル医学生理学賞受賞者である山中伸弥氏の対談をまとめた本です。

 

それぞれのノーベル賞受賞理由は、益川氏が「小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見による素粒子物理学への貢献」、山中氏が「様々な細胞に成長できる能力を持つiPS細胞の作製」となっています。

 

本書では、これらの研究内容について、ごく優しく紹介されています。それに加えて、その研究や発見に至るまでのお二人の子供の頃からの経歴が、紆余曲折の時期まで含めて、包み隠さずに語られています。

 

さらに、お二人に共通している、あるいはそれぞれの個性的な、科学に対する真摯な姿勢・考え方・向き合い方が紹介されています。その内容から、私たちが自分の仕事や人生に対して向き合う上で、学べることは多いでしょう。

 

研究職の方に限らずとも、参考になることは多いと思います。今回は主に山中氏がお話されている箇所から引用しました。

 

 

2. 駆り立てるもの

 

 

「いてもたってもいられなくなる」

 

そんな状態に、行動に、あなたを駆り立てるものはありますか?

 

それは四六時中、片時も頭から離れない、寝ている間も夢の中で考え続けてしまうような、「将来の目標」でしょうか。

 

あるいは、家族や友人、大切な人の「喜ぶ顔」でしょうか。

 

それとも、自分の存在意義と誇りをかけて取り組む、「重要なプロジェクト」でしょうか。

 

もしかしたら、誰かとの「約束」や「誓い」でしょうか。

 

それが何であっても、どんな形のものであっても構いません。

 

私たちの人生を、私たちが望む方向に推し進めてくれるのは、それらによる「束縛力」です。

 

「束縛力」といっても誤解のないように念のため、補足しておきますね。ここでの束縛と言っているのは、「自縄自縛」して全く動けなくなる、という意味のものではありません。そうではなくて、「望ましい1つの方向、ゴール地点」へと、半ば強引に自分を引っ張って行かせる、という意味での「束縛力」です。

 

この束縛力が強ければ強いほど、あなたが望む方向へと進む「推進力」は強くなり、あなたは早く目的地へと到達することができるでしょう。

 

 

例えば「犬ぞりレース」を想像してみて下さい。スタート地点からゴールまで、早く到達した方が勝ちです。

 

もし、あなたの乗ったソリを引っ張ってくれる犬の数や種類に制限が無かったとしたら、あなたはどんな戦略を立てますか?

 

極端に考えれば、ソリが見えなくなるくらいの数の、力の強い大型犬の隊列を用意しようとするのではないでしょうか。

 

「力の強い」犬が「できるだけたくさん」いるほど、あなたのソリがゴールに到着するまでの時間は短くなります。

 

もちろん、犬の「力の強さ」は「束縛力の強さ」に、そして犬の「数」は「あなたを前へ前へと引っ張る束縛の数」に相当します。

 

「束縛力の強さ」は「想いの強さ」に比例します。そのゴールがどれだけ自分にとって「切実」であり、「死活問題」であり、また「覚悟」を要するものであるか。「一生をかけるに値するもの」か。

 

これは逆にソリを引っ張る犬の「大きさ」と考えることもできます。

 

例えば「チベタン・マスティフ」のような超大型犬がソリを引っ張ってくれるのだとしたら、凄い勢いで前に進めそうですよね。

 

もう一つ、犬の「数」については「束縛の数」がどれだけあるか、と考えることができます。

 

あなたを引っ張ってくれる束縛の数が一つだけだとしたら、それに抗うことは簡単にできるかもしれません。

 

でも、束縛の数が増えてくると、抗ったとしても、結局はズルズルと、少しずつ、少しずつそちらの方向へ、目的地を目指すための行動へと、引きずられていくことになるのではないでしょうか。

 

私たちが、目標に向かって進むためには、この束縛力を上手に利用してやる必要があります。

 

強い想いを抱ける、自分を駆動してくれるものを意図的に用意して、そしてその数を増やしてやる、ということです。

 

今回引用した部分では、難病の治療法の確立を切望している患者さんに、一刻も早く治療薬を届けたいという想い、そして山中氏のお父さんへの想いが、iPS細胞のさらなる実用化のための研究へと山中氏を駆り立てる非常に強力な力となっていることが分かります。

 

これほどの想いを、あなたはあなたが実現したいと思うことに対して持っていますか?

 

 

正直に申し上げると、私自身も、ここまでの想いの力を自分の中にまだ抱けていない、と痛感しました。

 

私たちもこれくらいの強い「束縛力」、つまりそれは別の呼び方をするならば「駆動力」です、を見つけることができれば、たとえ困難にぶつかっても、すぐに諦めてしまうことなく、挑戦を続けることができるようになるでしょう。

 

 

3. Vision & Hard Work

 

山中氏は本書の中で、研究者として成功するための条件として、「VW」という言葉を紹介されています。これはアメリカで研究していた時のボスの言葉であり、「Vision & Hard Work」を意味しているそうです。

 

つまり、「明確なビジョンを持ち、それに向かって一生懸命に努力すること」です。

 

当たり前のことだけれども実践することは難しく、ビジョンがなければ、せっかくのハードワークも無駄な努力に終わってしまいます。

 

そこで思い出して欲しいのは、あなたをビジョンへと「駆り立てる力」です。あなたのソリをゴールへと引っ張ってくれる、勇敢でありながらも同時に友好的なワンちゃんたちのことです。

 

あなたはどんな「内なる犬達」を飼っていますか?

 

前にグイグイと引っ張ってくれたり、あるいは後ろから吠え立てて、早く前に進むように急かしてくれる、そんな犬達は身近にいますか?

 

彼らはペットショップには売っていません。でも私たちは私たち自身の中を探索することで、彼らを見つけることができるはずです。

 

そして一度出会うことができたなら、彼らはあなたの「生涯の友」として、あなたと共に前へ、前へと、歩んでくれることでしょう。

 

 

 

最後に、過去に書いたブログ記事から、今日の内容に関係しそうなものをいくつかご紹介しておきます。合わせてお読み頂くと、ご自身の現状を振り返り、考え方を整えて頂くのに役に立つのではないかと思います。 

 

 

ハードワークすることの意味についてはこちら。

 

www.reading-and-contribution.com

 

想いの力に合わせて、私たちに残された時間を強く意識付けしたいならこちら。

 

www.reading-and-contribution.com

 

行動できるようになるためのビジョンの具体的な作り方についてはこちら。

 

www.reading-and-contribution.com

 

 

 

4. まとめ

 

・目指すビジョンに向けて自分の行動を駆り立てる想いの力が強いほど、

 そのビジョンに近づいていくことができる

 

・従って、私たちがビジョンに向けて近づくためには、強い想いを抱けるものを

 自身の中に発見する必要がある

 

・その想いが大きく、また数が多いほど、犬ぞりレースの犬達のように、

 あなたを力強くゴールの方向へと引っ張ってくれる

 

 

〈今日の読書を行動に変えるための
 個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい

 

・超一流の研究者の考え方や行動に学ぶ


2. 読んでよかったこと、感じたこと

 

・世界的な研究者も、決して順風満帆な人生を過ごしてきたわけではなく、

 様々な紆余曲折を経て、今に至ったことが分かった


3. この本を読んで、自分は今から何をするか

 

・深く自分を掘り下げて自分の相棒となる頼もしい犬を見つける


4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか

 

・枯渇することのない情熱をもって、自分のビジョンを目指して

 邁進している

 

・一つのマイルストーンを前倒しで達成している

 

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「大発見」の思考法 (文春新書)

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