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読書尚友

先人の叡智を自分の行動に落とし込んで、成長と成果に変えていくブログ。焼きたてのトーストにバターを塗るように、日々の学びを薄く薄く伸ばして染み込ませてゆく

人工知能は心に湧き上がる感情を取り扱うことができるのか? 読書日記『ビッグデータと人工知能 ―可能性と罠を見極める』西垣通 著①

工学 コンピューターサイエンス

 

 

今日の読書日記は『ビッグデータ人工知能 ―可能性と罠を見極める』から、心脳問題について。

 

 

心脳問題(より広くは心身問題)は、昔から哲学の難問として知られてきた。これは平たくいえば、「脳」という白っぽい一塊の物質からいかにしてわれわれの波騒ぐ「心」が出現するのか、という問題だ。

 

物質と精神(意識)との関係を問うことでもある。心がなければ真の知性があるとは思えないし、前述のように汎用人工知能は「強いAI」であり、自らを意識する心を持っていると仮定されている。

 

カーツワイルだけでなく、多くの関連研究者はそういう哲学的議論は避け、脳を分析すれば心を理解でき、さらに進んで、脳を再現すれば心をつくれるという前提に立っている。

 

本書で心脳問題に関して協調したいことは、唯(ただ)一つである。――「脳」とは、われわれが外側から、なるべく客観的・絶対的に分析把握するものであり、一方、「心」とは、われわれが内側から、主観的・相対的に分析把握するものだ、ということ。

 

クオリア(感覚質)という言葉がある。たとえば私がある日に山頂でご来光をあおぎ、あまりの気高さに深く感動したとする。そのとき心にあふれた、筆舌につくしがたい何かが、クオリアだ。

 

それはあくまで私の主観に生じた出来事で、客観的存在ではないので、誰かに完璧に伝えることは原理的にできない。クオリアは個人的に体験されるが、それは「私」の心を内側から観察しないと決してわからないものである。

 

人間の主観世界を形づくるのはイメージの連鎖だが、そのなかにはクオリアが宿っている。クオリアを除外して心を論じるなら、それはとんでもない誤りという他はない。

 

ところで一方、脳というのは、研究者たちが客観的に外側から観察し、正確に分析すれば共通の記述結果がえられるはず、という存在である。

 

人間の頭蓋骨のなかに約一〇〇〇億個の神経細胞があり、それらがシナプス結合されている、などといった分析はその一例だ。だが、脳のなかにクオリアを見出すことは不可能である。

 

要するに、心と脳とは、観察の仕方や視点に伴ってそれぞれ出現するといってよい。

 

 

〈今日のコンテンツ〉

ーーーーーーーーーーーーーーーー
1. 心と感情

2. 境界線

3. まとめ

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1. 心と感情

 

 

以前、人工知能に関する別の本を読んだ時に感じたことがあります。

 

コンピュータが「学習」して、人間の感情の機微を読み取ることができるようになるためには何らかのインプットが必要なはずです。

 

でも、今回引用した箇所に述べられているクオリアのような感覚、個人の内側だけで沸き起こる感情は、外に出力されることがないため、コンピュータも「学習」することができないのではないか、ということです。

 

もちろん細かく見れば、感動して涙が出たり、体温の上昇などがあれば、それらを出力と判断して「学習」することは可能でしょう。

 

そうであったとしても、人間同士でも伝えることが難しい「筆舌につくしがたい何か」を、コンピュータに正確に理解させることはなお一層難しいように思います。

 

人間が気づいていない何らかの特徴量を抽出するにしても、そもそものインプットがないと行えません。

 

だからこそ、AIで「人の心を再現する」ためには、何らかの手段で人の心の内面を読み取ること、この手段を開発することが必要になりそうです。心のモニタリングです。

 

私たちが外から人間を観察したところで、実際のところはその人が何を考えているかは分かりにくいものです。 

 

脳の構造や働きを調べて、それをコンピュータ上に擬似的に再現するという「外側からのアプローチ」だけでは、「心を持つAI」を創り出すことは困難なのではないかと思いました。

 

 

2. 境界線

 

「困難」、という結論で終わってしまえば、それは思考停止で、そこからの進展がありません。

 

「心を持つAI」ができるとすれば、どうすればいいのか、に考えを進めていきたいと思います。

 

私たちの内側に絶え間なく生じる感情、心のゆらめきをそのまま取り出すことができれば、そしてそれをコンピュータに移植することができれば、「ドラえもん」のような自分の意志を持ち、友達になれるロボットが実現できるかもしれません。

 

現時点では、その方法は分かりませんが、答えがあるとすれば、心の問題を深く深く問い詰めて行くことなのだと思います。

 

心理学、哲学的な内側からのアプローチと、脳科学、生物学、コンピュータサイエンスのような外側からのアプローチにより、心と脳の共通点や交差点となる部分を探すのです。

 

本書の著者は脳の分析などの外側からのアプローチだけでは心を再現することは難しいとは述べられていますが、心と脳、つまり内側と外側の両方から迫るアプローチを否定はしていません。

 

この境界線を乗り越えるには、領域をまたぐ様々な分野の知見を持ち寄って対処する必要があるでしょう。

 

でも、境界線、交差点では、イノベーションが起こりやすいというのはこれまでもよく言われていることです。

 

心と脳の境界線は、とても様々な分野の交差点上にあります。ですから今後必然的にイノベーションが発生するでしょう。

 

これはいわゆる研究者や技術者だけの話ではないので、私たちももしかしたらそのイノベーションの発生に何らかの形で関与することができるかもしれません。

 

そしてもし、イノベーションが起こったとしたら、私たちは否応無しにその変化に巻き込まれるでしょう。それはインターネットのない生活が今ではあまり考えられないのと同じことです。

 

ですから、AIが心を持つような、そういった時代に、私たちはどのように生きていくのかを今から考えておいても良いと思うのです。

 

 

 

3. まとめ

 

・脳を分析して再現するだけでは、

    心の 再現までは難しい

 

・脳と心、内側と外側からの領域をまたぐ

   アプローチが心を持つAI実現の鍵となる

 

・心を持つAIが生まれた場合、その変化に私たちは

    否応無しに巻き込まれるだろう

   

・従って、そのような時代の生き方や価値観を

    今から考えておきたい

 

 


〈今日のチャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい

 

人工知能ビッグデータに関する知識、

    情報の収集


2. 読んでよかったこと、感じたこと

 

・自分が以前感じた感覚がクオリアと呼ばれる

    ものであることを知ることができた


3. この本を読んで、自分は今から何をするか

 

人工知能に関する情報収集を続ける

 

・心と脳の境界線を超える方法を考えてみる


4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか

 

・脳と心を取り巻く問題の周辺についての

    知識を得ている

 

・様々な周辺領域の知見を持つ人達との

    つながりができている

 

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