読書尚友

先人の叡智を自分の行動に落とし込んで、成長と成果に変えていくブログ。焼きたてのトーストにバターを塗るように、日々の学びを薄く薄く伸ばして染み込ませてゆく

停滞感、閉塞感を打ち破るには? 『知の越境法 質問力を磨く』池上彰 著

 

知の越境法 「質問力」を磨く (光文社新書)

知の越境法 「質問力」を磨く (光文社新書)

 

 

 

越境の醍醐味にはどんなものがあるか。基本的には4つの類型が考えられると思います。

 

1 知らないということを知る。「無知の知」(こどもの視点)。

2 知らないことを知って、停滞を破る(未知の人や土地に越境する)。3 離れているものどうしに共通点を見出す

4 知らないことを知ることで多数の視点を持つ。自分を相対化する。

 

 

多角的な視点を常に持つことは、本来は非常に大事なことなのですが、いまは多くの人が、その面倒臭い作業に耐えられなくなりつつあります。

 

自分のいままでの意見は変えたくない。自分にとって心地いい記事だけを読みたい。自分が理解できることだけを読みたい。世界が複雑化し、物事の白黒が簡単にはつけられなくなってきているだけに、人は複雑なことを考えたくなくなっています。

 

 

本当に自分はものを知らない、と痛烈に思う経験というのは、なかなかないものです。私はそれをこどもたちによって味わわされました。

 

自分がものを知らないと思えば、人に尋ねることも恥ずかしくなくなります。尋ねれば、新しい知に出合うことができます。

 

こどもはある時期、疑問の悪魔に取り憑かれたように、しつこく「あれは何」「これはどうして」と問い続けます。ああやって世界に対する知識を溜め込んでいるのだと思うと、感動さえ覚えます。大人としては付き合っているだけで疲れるのですが。

 

こどもによって自分の無知を知らされ、私はいつもこどもの視点に戻る癖がついたと思っています。だから、「王様は裸です」とも言えるようになった、と思います。

 

目を輝かせて質問を繰り出し、知の越境をする。これを続けるかぎり、知的退行は起こりようがありません。

 

たとえば、あなたが会社員だとすれば、必ずどこかの課に属しているはずです。自分の課の仕事に精通するのはもちろんにしても、それしか知らないのは、もったいないことです。

 

仕事の範囲が決められていることで、逆にそのはざまに残されている分野が見えてくる。そのどちらにもあてはまらない部分に橋を架けるのです。自分の仕事とほかの人の仕事の位置づけをじっくり見ることで自分の仕事を越境させるのです。

 

人生では、さまざまな場面で高い壁に行く手を阻まれることがあります。そんなとき、真正面の壁を越えるのではなく、真横に移動することで、壁のない道が見つかることもあります。これを私は「越境」と名付けました。

 

人生の越境ばかりでなく、「知の越境」というのもあるはずです。専門分野に閉じこもることなく、さまざまなジャンルに飛び込んでいく。いわゆる「専門家」ではない視点から、新しい発見も生まれるはずです。

 

 

〈今日のコンテンツ〉

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1. この本はどんな本か?

2. 質問の悪魔に取り憑かれる

3. 溶ける境界線

4. まとめ

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1. この本はどんな本か?

 

池上彰氏がNHKの地方支局での記者時代から、現在のようにフリーとして活躍するまでの仕事生活を振り返り、その都度、どのような考えで仕事や勉強に取り組んできたのかが書かれた本です。

 

その考え方を表すキーワードとして「越境する力」という言葉が挙げられています。

 

時には意図しない逆境のような「越境」があった時も、めげずに正面からぶつかったことで、現在の著者の大活躍の基盤となる下地が構築されていったようです。

 

著者は記者時代に、警察署、県庁、銀行、気象庁から消費者団体まで無数の取材に行かれたそうです。でも、そのような時、業界の事情や専門用語について記者が不勉強であれば、取材先からまともに情報を引き出すことができません。

 

従って、そのような専門知識を得るために、異動などで自分の担当が変わる度に、本を読んで必死にその業界について勉強したそうです。

 

著者は、記者生活の後、ニュースを読むキャスターを担当したことで、「分かりやすく伝える」技術を身につけました。

 

また、雑誌にニュースを伝える連載コラムを持ったことから、ニュースの背後にある現代史について学び、それをまとめる本(『そうだったのか!現代史』)を書いたことが人生の転機になったと語っています。その時、その本を書くために相当な数(131冊)の参考文献を読み込むことで、様々な地域やテーマについて語ることができる下地ができたといいます。

 

こども向けのニュース解説番組「週刊こどもニュース」を担当することになった時には、「小学生に分かってもらわなければならない」という具体的な目標を立てたことで、自身の理解が深まり、人に説明できるようになったと語っています。このことを「アウトプットを意識したインプット」として述べられています。

 

『他人に説明できるまでに「理解できた」と言えるようになるためには、自分が学んだり見聞きしたりした内容をどう相手に伝えるかを常に意識することが重要』とのことです。

 

そしてこの経験を通じて、物事の本質まで踏み込んで考えること、あらゆる出来事を基本まで立ち返って考えることができるようになったそうです。

 

 

2. 質問の悪魔に取り憑かれる

 

もし、あなたが今、何かの「停滞感」や「閉塞感」を感じて内側に不満が溜まってきているのだとしたら、それはあなたが「居心地のいい」環境に留まっているせいかもしれません。

 

今の自分の置かれている環境や仕事の中で、「自分はうまくやっている」、「十分に役割を果たしている」。自信を持ってそう言い切ることができたとしても、それ以上の成果には到達していない。そんなことはないでしょうか?

 

人間は誰でも楽な方に流される生き物です。仕事でも、自分がその職務に求められるに足る役割を果たしている、と判断できるようになる、つまり、いわゆる「一人前になる」と、それ以上の努力を重ねることが途端に困難になります。これを乗り越えるには、自分を律する強い意志の力と高いモチベーションが必要になると思います。

 

経営コンサルタントの小宮一慶氏はこのことを「一人前と一流は違う」という言い方をされています。一人前とは、「一人で、人並に仕事をこなせるようになった状態」です。一方で一流とは、「一人前になっても半人前の心を持ち続けて必死で努力することで成れる状態」だと言います。

 

「越境」という言葉を聞くと、例えば国境など物理的な境界を越える印象が強くあります。日本は島国ですが、ユーラシア大陸、あるいは北米、南米大陸などでも、陸続きの国と国の国境を一歩またいでしまえば、言葉も、文化も、そこに暮らす人々の生活水準も「全く異なる」ということが多々あります。

 

これは今回引用した越境の醍醐味の2番、「知らないことを知って、停滞を破る(未知の人や土地に越境する)」に相当します。

 

同時にこれは4番の「知らないことを知ることで多数の視点を持つ。自分を相対化する。」にも該当しています。なぜなら、他の国について知ることで、良いところも悪いところも含めて、自分の国との比較ができるようになるからです。

 

ライフネット生命保険の創業者の出口治明氏は自己を成長させるものとして「人・本・旅」の3つを挙げられています。

 

これらは本書の著者の池上氏が言うところの「越境」と要は同じことを表しています。

 

旅をすること、特に国境を越えることは少し肉体的、時間的、金銭的ハードルが高くなります。でも、今まで会ったことのない人に会って話すことや、読んだことのない本を読んで自分とは違う著者の考え方に触れることならば、ずっと簡単にできますし、それらも立派な越境です。

 

越境して経験値を貯めることで、私たちは成長していくのです。ゲームで例えるとするならRPGでしょうか。ドラゴンクエストでもファイナルファンタジーでも良いですが、経験値を貯めてレベルアップすると、強いモンスターがでる地域にも移動して冒険できるようになりますよね。これはつまり、「経験値を貯めて、越境していくことで自分の認識できる世界が広がる」ということです。

 

ただし、ただとりあえず、本を読んでみた、人に会って話してみた、旅をしてみた、というだけでは、せっかくの越境から得られる経験値が半分以下になって、私たちのレベルアップは遅くなってしまうのではないかと思います。

 

越境する、ということはこれから私たちにとって「未知の国へと旅立つ」ということですから、武器の一つくらいは携えていきたいところです。

 

では、その「越境のための武器」とは何かというと、これが本書のサブタイトルにもなっている「質問力」ということになります。もっと簡単に言うと、「なぜ?」「どうして?」という疑問を抱く、ということです。

 

あなたは小さい子供のように、「なぜ?」「どうして?」を口にすることができるでしょうか。

 

場の雰囲気にのまれて、あるいは自分の無知を恥ずかしく思い、疑問が思い浮かんだとしても質問することを断念してしまっていないでしょうか。

 

著者は質問について、「未知のことを知るだけでなく、自分を謙虚にすることでもある」と述べています。それは質問することによって、それまでの自分が如何にものごとについて知らなかったかが分かるからです。

 

また、「愚かな質問はない、あるのは愚かな答えだけだ」という言葉を紹介されています。これは、変な質問をして愚かだと思われるのがいやで、質問自体を抑え込んでしまうと、本人の成長の機会を奪うばかりか、その質問をすることで周りの人も賢くなる機会を奪ってしまう、だから質問することをためらってはいけない、という考え方です。

 

前述した「人・本・旅」で言うと、人以外は、質問しても明確な答えは返ってきませんから、質問の答えは自分で探さないといけません。それでも、「事前に問いを立ててから越境する」という姿勢が大切だと思います。

 

そして越境してみて、自分の立てた問いが間違っていることに気づいたら、それはその都度、修正して新たな問いを立てれば良いのです。

 

問い、質問は越境の「目標」といっても良いかもしれません。始めに目標を立てておくと、これから何を実現したいのか、どういう状態になっていたいのかが明確になっているから、同じ時間、同じ行動をしたとしても得られるものが変わってくるのだと思います。

 

ですから、私たちの越境による成長を最大化するためには、子供のように「疑問の悪魔に取り憑かれてみる」ことが必要になってくるのだと思います。

 

子供達は恥も外聞もなく、質問することで、どんどん越境して世界を広げていきます。そのマインドをもう一度思い出すのです。

 

「疑問の悪魔」のマインドを携えて、物理的にも精神的にも越境していくことが、私たちの停滞感、閉塞感を打ち破る鍵となってくれるでしょう。

 

3. 溶ける境界線

 

「越境」という言葉を辞書で調べると「境界線を越えること。特に、法的に定められた領界を無視して侵入すること」と書かれています。

 

これからの時代は、これまで何かと何かを隔てていた「境界線」は消えていく方向にあると思います。

 

特にテクノロジーの進歩によって、ある一つの業界に他業種からの参入が相次ぎ、競争が激化する、ということが起こっています。

 

例えば自動車業界においては、「電気自動車」が登場することで、一気に参入のハードルが下がり中国の新興メーカーなどが参入してきました。

 

これは、それまで自動車メーカー各社のノウハウの塊、複雑な摺り合わせ技術を元に作られていたエンジンではなく、ラジコンカーなどのようにモーターで簡単に車を動かすことができるようになったことが一因です。

 

それどころか現在実証試験が始まっている「自動運転」では、その制御に人工知能を用いることからソフトウェアメーカーが多数参入して開発をリードしています。

 

国による規制や保護という「境界線」がある業界だとしても、それがいつまで守ってくれるかは分かりません。

 

境界線は徐々に消えて、その隙間から水が染み出すように他業界からの招かれざる来訪者がやってくるようになるでしょう。

 

そのような時代だからこそ、逆に自ら進んで「越境」していくことが求められるのだと思います。

 

今の安住の地は、やがて安住の地ではなくなるかもしれません。それでも「越境していく意思」を持ち、行動していけば、旅に出た私たちを待っている新しいオアシスを見つけることもできるはずです。

 

4. まとめ

 

・越境は意図していなかったものであっても、

 自分を成長させるチャンス

 

・越境で成長するための武器は「質問力」

 子供のように「疑問の悪魔」に取り憑かれてみよう

 

・境界線が消えていく時代だからこそ、

 自ら越境をしていこう 

  

 

〈今日の読書を行動に変えるための
 個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい

 

・著者の考え方、学び方を学ぶ 

 


2. 読んでよかったこと、感じたこと

 

・越境に対する考え方が腑に落ちた

 

・セールスにおいて、「自分が売りたいものを強調する

 のではなく、その周辺を演出する」という考え方が

 参考になった


3. この本を読んで、自分は今から何をするか

 

・アウトプットを意識した行動の割合を高める

 

・質問を行動の事前に用意する


4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか

 

・常時、疑問の悪魔に取り憑かれており、

 あらゆる行動の成果を最大化できる状態が

 整っている

 

・越境することが日常生活のワンシーンに溶け込んでいる

 

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