自分の「人生の軸」を見つけるには?『メモの魔力』前田裕二 著
メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)
- 作者: 前田裕二
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/12/24
- メディア: 単行本
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最初に強調しておきたい大切な価値観があります。それは、「メモは姿勢である」ということです。
何らかの目的を持って、日々、あらゆる情報に対して、毛穴むき出し状態でいられるかどうか。身の周りのあらゆる情報にアンテナを張り、そこから何らかの知的生産を行う意識を持てているかどうか。
この、弛まぬ知的好奇心と、知的創造に対する貪欲なスタンスこそが、メモ魔として最も大切にすべき基本姿勢であり、この本に出会ってくださった皆さんにフォーマット以上に身につけてほしい素養です。
僕のメモ術のエッセンスは、シンプルに3点です。
①インプットした「ファクト」をもとに、
②気づきを応用可能な粒度に「抽象化」し、
③自らのアクションに「転用」する。
この三つに尽きます。
「ファクト」を書きっぱなしにしておいては、そこからは何も生まれません。必ず一度自分で書いた――少なからず「興味深い」と感じて、世界から自分が切り取った――ファクトをどこかで振り返ってそこからの気づきを「抽象化」する。そして、アクションに「転用」する。
シンプルですが、メモというフォーマットを通じてこのプロセスを自分の手に、そして脳に染み込ませることが、知的生産性を上げる上で非常に役に立ちます。この魔力をひとたび身につけると、不思議なほど世界が違った場所に見えてくるでしょう。
実際に抽象化思考を身につけたい、と思ったときに、どんな思考のフローを経ればよいのかを解説します。
まず、この三つのステップに慣れてください。
①:具体的情報を正確に受け取る。
②:①から「他に転用可能な」要素(気づき・背景・法則・特徴など)を抽出(=これが狭義の「抽象化」)。
③:②をさらに別の何か具体的なものに転用。
つまり、もっとシンプルにすると、
①具体
②抽象
③転用
という思考フローを経ています。
具体的に僕らが見たり聞いたりしてこの現実世界から受け取る情報から、
・「ここから何か(他にも当てはまることが)言えないかな」
・「これはなぜかな、背景は何かな」
・「あらゆるこの種類のものって、〇〇ということが当てはまるよな」
・「これの特徴はこうだな」
といったことを考えて、より抽象度の高い(=より多くの具体的な何かにも当てはめることができる)概念を導き出すのです。
この本を読んでいらっしゃるみなさんは、ぜひ、面倒でも、本やテレビ、映画や舞台を観ているときなど、情報やコンテンツに触れる際に、メモをとり、抽象化する癖をつけてみてください。
抽象化を通じてインプットした法則は、あとからいくらでも他の具体に転用して味わえる、「価値のある原液」になります。
自分の意識次第でいくらでも原液を採掘できるこの情報の時代に、あらゆる原液の前を素通りしてしまうことは、とても機会損失が大きなことだと思います。
〈今日のコンテンツ〉
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1. この本はどんな本か?
2. 全ての毛穴を開いて情報を吸収し、咀嚼し、転化する
3. 人生の軸を見つける
4. まとめ
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1. この本はどんな本か?
インターネット上の仮想ライブ空間を提供している「SHOWROOM」という企業の経営者が「メモの取り方」について書かれた本です。
急成長しているベンチャー企業のトップは、一体どういう思考回路を持っていて、その思考力をこれまでどうやって身につけてきたのか。
本書では、思考力を磨き上げて、夢を実現するためのメモの取り方、およびその背景にある著者の「一度きりの人生への向き合い方」に関する並々ならぬ覚悟・熱量をつまびらかにしてくれています。
この本を、「何かを成し遂げた人の人生哲学」として、その考え方を自分を取り入れるために読むのだとしても良いでしょうし、あるいは、「自分の思考力を鍛え、目標を実現するためのメモの取り方」というノウハウを学ぶために読むのだとしても、どちらでも非常に有益だと思います。
紹介されているメモ書きのフォーマットはシンプルですが、思考の訓練と、自分の人生をより良い方向に切り開く、という意味で効果は抜群です。
メモ書きをある程度続けることさえできれば、この本に投資したお金と読書時間分のリソースは短期間で回収できることは間違いないです。
そしてそこから先は、「メモ書きの習慣」が引き起こす「どこまでも研ぎ澄まされていく思考力」と、それに伴う「知的生産性の向上」、「自信」、「自分の人生の軸の発見」、「成功体験や成果」といった、数々の無形の資産が積みあがっていくばかりになると思います。
そういう意味でとても費用対効果が高く、非常にお勧めできる本です。
ご興味を持たれた方は、是非、一度読んでみて、そして、ここに書かれているやり方でノートにメモ書きを始めてみて下さい。
2. 全ての毛穴を開いて情報を吸収し、咀嚼し、転化する
著者は「メモを取る」ことで数々の夢を実現してきたといいます。その方法はシンプルなもの。
詳しい書き方は本書に譲りますが、ノートを見開きで使い、まず、左側のページに具体的な事実や感じたこと、「ファクト」を書きます。
それから右側のページの左半分には、それを「抽象化」したこと、つまり、その「ファクト」の「特徴」や「なぜそう思ったのか」などを深堀りして書いていきます。
そして右側のページの右半分には「抽象化」した項目を何か他のことに活用できないか、抽象化したことを受けて、次に自分は何をするのが良さそうか、つまり「転用」を考えて具体的なアクションを書きます。
そうやって得られたアクションのアイデアを実行に移し、その結果としての新しい「ファクト」をメモに記載します。それをもとにして、そこからさらに「抽象化」→「転用」を繰り返していく、という流れになります。
引用した部分にある通り、あらゆる情報に対して「毛穴むき出し状態」でいられるか、という比喩が述べられています。どんな些細な事柄であっても、何か自分の心に引っ掛かることがあれば、その理由を徹底的に考え、「逃げずに言葉にしていく」、それを当たり前の状態にしていくことで、抽象化の力が高められるということです。
何かの出来事や自分の心にふっと浮かぶ感情を抽象化するには、非常に頭を使います。
「この現象は要するにどういうことを意味しているのか?」
それを考えることは最初のうちは「精神的苦痛」を伴う作業になるかもしれません。でも、本当に自分の頭を良くしたい、深く、速く考える力をつけたいと思うのであれば、そして生産性を高め、今よりも人生をより良くしていきたいと思うのであれば、この「考える」という作業を避けて通ることはできません。
そして「考える」という作業は「考えたことを言葉にしていく」ことで進むものです。逆に言うと、メモを取らずに頭の中で考えているだけでは、思考は堂々巡りをするだけで前に進むことはできません。
私はデジタルのメモも併用していますが、やはり、自由に発想を広げられるという点と、いつでも、どこでも、すぐに思考を開始できる、という利便性から、アナログの紙とペンに勝る思考のツールはないと思っています。
メモ書きは、例え少しずつでも続けていくことで、例えば1か月後にメモを書いたノートを振り返ってみた時に、自分の成長や進歩を感じることができるものだと思います。
本書で述べられているメモの取り方で、個人的に素晴らしいと感じた点は、日記のように、ただの事実の羅列や簡単な感想を書いた程度では「終わらせない」という仕組みになっているところです。
その日、そのタイミングで自分が受信した情報、「ファクト」から、「抽象化」という過程を経ることで、強制的に「気づき」を考えさせる強力なシステムになっているところです。「強制的に」考えさせるフォーマットになっているというところがポイントで、このことが私たちの思考力を高めてくれる仕組みなのです。
「ファクト」→「抽象化」という、このフォーマットを踏まえれば、例えば、道端の看板や通勤電車の中吊り広告、夜中に遠くで聞こえるバイクが走る音など、そんな事象からでも、何か自分にとって有用な「気づき」を得られないかを考えてみる、そういう「訓練」を自動的に積むことができるようになっています。
さらに、「抽象化」した「気づき」から、もう一段階、今度は「転用」を考えることで、再び「抽象」から「具体」まで落とすことを考えられるようになっています。
つまり、「具体」→「抽象」→「具体」→「抽象」→「具体」→・・・
という「思考のレイヤーの上昇下降運動」を繰り返させる「思考のダンベルによる筋トレブートキャンプ」が、ノートを使った簡単なフォーマットでありながら、自然な形で行えるようになっている、ということですね。
これで考える力がつかないはずがありません。
「抽象化」やその「転用」(類推:アナロジー思考)の重要性について述べられている本としては、本書でも紹介されている細谷功氏の著書『具体と抽象』や『アナロジー思考』、また、稲垣公夫氏の著書『深く、速く、考える。』などがあります。
参考までに、昔、上記の本について書いたブログ記事を貼っておきます。これらの本も「具体」→「抽象」→「転用」の重要性とその方法について学ぶ上でとても得るものが多いと思います。
www.reading-and-contribution.com
www.reading-and-contribution.com
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また、メモ書き、と言う点では、こちらはノートではなく、A4用紙を使う方法ですが、赤羽雄二氏の著書『ゼロ秒思考』も外すことはできません。
www.reading-and-contribution.com
少し脱線しましたが、本書『メモの魔力』のオリジナルな点は、
「具体化→抽象化→転用(類推:再具体化)が大切なことは分かった。でも、どうすれば良いのか分からない」
というニーズに対して、非常に具体的で、かつ取り組みやすい方法を提示したことだと思います。
このメモのフォーマットに従えば、問答無用、否応なしに「抽象化」→「具体化(転用)」の訓練を積むことができます。そして気が付けば、自分の「抽象化能力」、「思考能力」、「言語化能力」が高まっている、という効果が期待できます。
3. 人生の軸を見つける
私も仕事やプライベートにおいて、メモは比較的たくさん取る方の人間だと思っていましたが、この著者は桁違いでした。
就職活動の時にエントリーシートを書くために自己分析を行った経験は、社会人の方なら誰でもお持ちだと思います。著者は就職活動時に、なんとノート数十冊分もの自己分析を行い自分を掘り下げたそうです。そこまでできる人はめったにいないでしょう。
突き抜けるためには狂気的だと人に思われるくらい何かに対して徹底して取り組まなければならない、ということを感じました。
この本の巻末付録として、著者が自己分析に用いたという「自分を知るための」1000問もの問いが載っています。これらの問いに答えていくことで、自ずから私たちそれぞれの、譲れない「人生の軸」が見つかるそうです。
(早い人は100問くらい答えれば見つかるそうです)
「自分自身は一体どういう人間なのか?」
そして、
「自分は、この一度きりの人生をかけて何を成し遂げたいのか?」
そのような根底にかかわる部分がこの自己分析を通して見えてくるといいます。
もちろん、この1000問に対して、「一問一答形式」のような上っ面の回答を行って良いわけはありません。全て、これまで述べてきた「ファクト」→「抽象化」→「転用」の流れで、ノート見開きに対して、1問ずつ答えていくことが求められています。
私も早速始めてみましたが、このやり方でじっくり考えていくと、1時間かかってようやく1問に回答できた、とか、そんなペースになりました。先の道のりは、まだ残り990問くらいあるので遠いですが、今年一杯くらいかけてこの1000問を通じて自分自身と真剣に向き合ってみようと思います。
それくらい自分を深く見つめ直したことは、本当に、就職活動が終わって社会人になって以降ほぼなかったと思いますので、とても有意義な時間を持てていると思います。
「人生の軸」を見つけているか、いないかというのは、この先の人生をどれだけ満足して生きることができるか、その根幹に関わる部分です。
ですから、たとえ回答に1年くらいかかったとしても、深く「自分という人間」を理解することができて、残りの人生の質が高まり、「完全燃焼の感覚」を得ることができたならば、その時間は後から振り返った時に、決して「停滞期」や「踊り場」や「モラトリアム」と呼ばれるようなものではなく、「跳ぶ前にしゃがんで力を蓄えた」時間だったとみなすことができるでしょう。
今年新たに始める毎日の習慣の一つとして、この「ファクト」→「抽象化」→「転用」のフォーマットに基づいた「自己分析」を、皆さんも始めてみられては如何でしょうか?
4. まとめ
・メモを取る時の基本姿勢として、身の周りのあらゆる情報に
アンテナを張り、そこから何らかの知的生産を行う意識を持つこと
・「ファクト(具体)」→「抽象化」→「転用(具体)」の思考レイヤーの
上昇下降運動を繰り返す「思考の筋トレ」を行うことで自ずから
思考能力は鍛えられていく
・人生の軸、譲れない価値観、人生においてなんとしても成し遂げたい事、
そういったものを見つけるための「自己分析」にも、
「ファクト(具体)」→「抽象化」→「転用(具体)」のフォーマットは
大活躍する
〈今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい
・生産性を高めるメモの取り方について学ぶ
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・抽象化の能力を鍛えるための、今日から実行できる
メモの書き方について学べた
・巻末の自分を知るための問いに答えていくことで、
自分の内面についての理解が少しずつ深まっている
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・今年1年かけて1000問の自己分析を進めて、
自分の軸を見つけ、残りの人生を見つけた何かに
燃やしてみる
・ 抽象化の力、具体化の力、言語化の力を高めるため、
この本のやり方でメモを取り続ける
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・抽象化、具体化の能力が高まり、適切な言葉で、
今よりも短時間でメモを取ることができるようになっている
・最低限、「自分の軸」の輪郭は捕まえている
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- 作者: 前田裕二
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
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