新しい市場を見つけるには? 『UXの時代ーーIoTとシェアリングは産業をどう変えるのか』松島聡 著
今日の読書日記は『UXの時代ーーIoTとシェアリングは産業をどう変えるのか』から、顧客の「体験価値」について。
日本経済を牽引してきた製造業や流通業などが、垂直統制型から水平協働型のビジネスモデルへ転換していくのは、金融やITほど容易ではない。大がかりな企業の変革が必要になる。
変革を効果的に実行するには、これまでビジネスを支えてきた考え方や価値観の転換も必要だ。
意識・価値観を転換し、費用対効果ではなくユーザー・消費者に与える価値で考えれば、すべてが変わる。
既存の自社の仕組みにこだわらず、新しいUXを創り出すために、世の中のベストを組み合わせれば、新しい市場が創造できる。
経営者がすべきことは、今すぐ社員を古い呪縛から解放し、「ユーザー・消費者だけを見てビジネスを変えろ、新しいビジネスを創れ」という指令を発することだ。
アマゾンやグーグルなど、新しく生まれて急成長した企業は、すべてUX最大化を徹底して行っている。「業界」や「競合」を気にすることすらしない。
結果的に様々な新しい分野で競合は発生するかもしれないが、彼らがめざしているのは、常にまだ競合が存在していないような新しいUXを創り、提供することなのだ。
ここでひとつ確認しておく必要があるのは、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは何かということだ。
それはこれまで日本の企業が製品やサービスを開発する際の根拠としてきた「ユーザーニーズ」とは似ているようで全く異なる。
これまでの「ユーザーニーズ」はあくまでモノやサービスに備わっている価値のことだった。
開発の過程で、モノやサービスを活用してユーザーが何をするかについての理解はあっても、結局それらはモノやサービスの機能・性能に置き換えられてしまい、「商品」として提供されるだけだった。
ユーザーにとってモノは手段であって目的ではない。手段に対価を払うのは目的である価値を得るためであって、モノを買って所有するためではない。製造物中心主義の日本では、この点が理解されない。
手段であるモノを所有するのは、使用頻度が高く、持っていたほうが都合がいい場合であり、決して所有すること自体に価値があるからではない。
しかも、所有したほうが得か、他人とシェアし、必要なときにアクセスして利用したほうが得かの境界線は、徐々にシェア・アクセスのほうへ移動しつつある。
製造物中心の日本企業はこの点も理解していない。「ユーザーが第一」「顧客満足度が重要」と言いながら、ひたすらモノを多く造り売ることだけを考えている。
買ったユーザーの多くがその商品を所有する価値を感じなくなりつつあるかもしれないといったことには注意を払おうとしない。
モノの価値ではなく、UXつまり「ユーザーにとっての体験価値」を理解し、見極めることが、これからのビジネス創造では極めて重要なのだ。
〈今日のコンテンツ〉
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1. 体験価値
2. 「変化」を起こしてくれるものと
「変化」そのもの
3. まとめ
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1. 体験価値
技術の発展に伴い、これまで利用が難しかった様々な情報を活用することが可能になってきています。
近頃よく耳にするようになった言葉に、IoT(Internet of Things : モノのインターネット)というものがあります。
これは、パソコンやスマートフォンがインターネットに接続して情報を送受信することができるのと同様に、ありとあらゆる電子機器をインターネットに接続して、その間での情報のやり取りを行うというものです。
これが実現できるようになってきたことで、「何か」が、ある場所では「余っている」けれども、ある場所では「不足している」、そういった情報も共有できるようになってきました。
このような需要と供給の不均衡が目に見えるようになってくると、当然それを「ならして平らにする」方向に力が作用します。
自分の持つ資源を他の人と共有(シェアリング)することで、限りある資源をもっと有効に活用しようとする動きです。
シェアリングの例として、例えば、「民泊」という言葉が登場しましたが、これを取り扱っているAirbnb(エアビーアンドビー)という会社は、個人が所有している「空き部屋」を、所有者が使わない時だけ、旅行客などに貸し出すのを仲介するサービスを提供しています。
また、Uber(ウーバー)という会社は個人の所有する自家用車で、ドライバーが「空いている時間」に、自家用車をタクシーとして利用してもらうのを仲介するサービスを提供しています。
日本の会社では例えば、スターフェスティバルという会社は、飲食店のキッチンの稼働率が低い「空き時間」に目をつけ、有名な飲食店に空き時間にお弁当を作ってもらって、インターネット上で注文を受け、飲食店の代わりに販売、配送する、というようなビジネスを行っています。
この本の著者は、今後はこのような個人や会社の資源を、「組織の壁を越えて融通しあう」ビジネスでないと生き残れないと述べられています。
その理由として、企業の都合で作られた製品やサービス自体には、最早あまり価値を感じてもらえなくなってきている、ということだそうです。
そのモノを所有することや、そのサービスを消費することそのものに価値を感じてもらえる強い「ブランド力」があればまた違うのだと思います。例えば車はロールスロイスに乗るとか、ホテルは必ずリッツ・カールトンに宿泊する、とか。
ですが、ほとんどすべての会社、ほとんどすべての製品やサービスにはそのような強いブランド力は備わっていません。
そのような状況において、ユーザーから「選ばれる」ためには、ユーザーエクスペリエンス、つまりユーザーの「体験価値」を高めるような製品やサービスの作り込みがこれからは必要であり、求められているということです。
2. 「変化」を起こしてくれるものと
「変化」そのもの
では、ユーザーの「体験価値」を高める、とはどういうことなのでしょうか?
元々の出典を失念してしまったのですが、有名な例え話があります。
例えば、あなたが家の壁に新しく買ってきた掛け時計を取り付けたいとします。
でも残念ながら、家の壁には、掛け時計を取り付けるフックを刺すための穴が開いていませんでした。
そこであなたはホームセンターに行って電動ドリルを買ってきて、家の壁にフックを取り付けるための穴を開けました。
買ってきた電動ドリルは、工具箱に閉まって押し入れに片付け、その後、取り出すことがなかった、というような場合を考えます。
この場合、あなたが本当に欲しかったものは果たして「電動ドリル」だったのでしょうか?
違いますよね。
あなたが欲しかったのは、掛け時計を取り付けるフックを刺すための「壁の穴」の方だったはずです。
「電動ドリル」はあくまでもあなたが欲しいもの(=壁の穴)を得るための「手段」に過ぎません。
目的が「壁の穴」で、手段が「電動ドリル」です。壁に必要な大きさの穴さえ開けることができるならば、別に道具は「電動ドリル」でなくても良いわけですね。
「きり」を使って開けた穴にフックを指すことができるならばあえて「電動ドリル」を買う必要はありません。
商品やサービスの「売り手側」として考えないといけないユーザーの「体験価値」というのもこれと同じことです。
ユーザーの「利便性」や「体験価値」を向上させるという「目的から逆算」して、自社や自分の持つ資源で、その目的を達成することができるモノやサービスが何かを考えていかないといけないということです。
そのように考えた場合、自社(組織)の中だけでは、どうもユーザーの目的を達成するのに必要な資源がない、ということが起こり得ます。
そこで「シェアリング」も含めて、「外部の資源を活用する」ということが必要になってくるわけですね。
「自社(組織)内で調達が完結する資源」で作り出された製品やサービスと、ユーザーの視点から見て、あれとあれとあれを結び付ければ、きっと最高のものが提供できる!という確信に基づいて生み出された製品やサービスとでは、較べるまでもなく、後者が市場に受け入れられるでしょう。
品質であったり、コストであったり、納期であったり、会社や組織の中にはさまざまな制約があり、また、その制約があるからこそ、商品開発において柔軟で自由な発想が生まれる、という側面も確かにあります。
ですがもし、その制約を取り払えるとして、このような問いを立ててみるとしたらどうでしょうか?
「社外(組織外)の無尽蔵の資源を使って、ユーザーにとって今よりも『利便性』や『体験価値』を向上させる製品やサービスを提供できるとするならば、自分はどのようなものを生み出すか?」
「制約の外側」を発想することができたなら、そこには新しい市場が広がっているはずです。
無意識で意識してしまっている「境界線」を乗り越えていくことが、これからの仕事においては大切になってくるのでしょうね。
3. まとめ
・ユーザーの体験価値を高めることが今後は重要になってくる
・電動ドリルは「手段」、壁に開けた穴が「目的」
目的から逆算して、製品やサービスを考える
・「境界線」を乗り越えた資源の活用が新しいビジネスを生み出す
〈今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい
・UXやIoTに関する情報を収集する
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・体験価値を向上させるという考え方が
参考になった
・起業に関する考え方が参考になった
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・自分が組織の枠を乗り越えてできるビジネスを考えてみる
・自分が自分の心の枠を乗り越えてできることを考えてみる
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・体験価値を提供できる新しい市場を見つけている
・自分の行動を縛る制約条件が次々とはずれていく
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