人工知能と共存共栄していくためにはどうすればよいのか? 『人工知能を超える人間の強みとは』奈良潤 著
今日の読書日記は『人工知能を超える人間の強みとは』から、人工知能との住み分けと共存について。
今後、人間の直観と人工知能はもちつもたれつの関係になっていくと考えられる。直観の強みは、人工知能の弱みとなる。逆に、直観の弱みは人工知能の強みでもある。
このように、直観と人工知能は対照的な性質をもっているのである。
人間は、人工知能のように記憶力が優れていない。また、直観を働かせても判断の正確性に欠けるところがある。
しかし、人工知能は人間とは違い、指導力を発揮して組織運営をすることには不向きである。人工知能は、独創性を発揮して実際の現場で問題解決の決断を下すことができない。
そこで、人間の直感や感覚で判断・決断したほうがいい場合と、人工知能にまかせたほうが正確な判断ができて作業効率がいい場合で、人間と人工知能の分業がおこなわれるようになると予測される。
いわば「直観と人工知能のすみ分け」といえるだろう。
直観的思考が有利に働く場合もあれば、アルゴリズム・統計による判断が好ましい場合もある。
私たちにとって一番理想なのが、直観とアルゴリズム・統計のバランスをとりながら、適切な判断と意思決定を下すことである。
ところで、近年、クライン氏は直観とは別に人間の創造性を高める新しい能力を発見している。それが、「洞察力(Insight)」である。
直観とは、私たちが過去に習得した問題解決や目的達成の行動パターンを潜在意識レベルで組み合わせて発揮する心の働き(現象)のことをいう。
直観に対して、クライン氏は洞察力のことを「見えない本質を見抜き、問題解決や目的達成のための新しい行動パターンを発見する能力」と定義している。
たとえば、私たちが仕事、学問、芸術、スポーツなどで創造性を発揮するには、大きく2通りの方法がある。
1つは、過去に学んだ思考パターンや知識を新しく組み合わせてみること。もう1つは、今まで発見されていなかった思考パターンを見つけることで目的を達成し、新しい知識を獲得することである。
「パフォーマンスの方程式」
創造性
↑
パフォーマンス= ミス&不確実性 + 洞察力
↓
正確性
この方程式の図は、「人間のパフォーマンス(技能、性能、生産性という3つの言葉の意味が含まれている)は、どれだけミスや不確実性を抑え、同時に、どれだけ洞察力を働かせることができるかにかかっている」ということを意味している。
パフォーマンスの方程式の上下方向の矢印からわかるように、クライン氏は、人がパフォーマンスを向上させるには正確性と創造性の両方を追求しなくてはならないと指摘する。
ただし、クライン氏は、「私たちが判断や作業の正確性だけに固執するのであれば、直感や洞察力が働かなくなり、結局、創造性の芽がつまれてしまう」と懸念する。
このことはそっくりそのまま直観と人工知能の関係にも当てはまる。
〈今日のコンテンツ〉
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1. 正確性と創造性
2. すみ分けと共存
3. まとめ
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1. 正確性と創造性
この本では、人工知能に対して、人間が強みを発揮できるものとして、「直観」を取り上げ、「直観」をどのように高めていくべきか、また、「直観」の重要性について述べられています。
よく混同されますが、
「直感」=「学習、訓練、経験など以前に、感覚的に物事を感じ取ること」
「直観」=「推理や論理を用いず、すでに習得している知識や技能、経験を通して瞬時に物事を判断する、または物事の本質をとらえる人間特有の能力」
と定義されています。
「直観」を高めるためには学習や訓練が必要とのことです。
また、人間の能力には色々なものがありますが、記憶力、理解力、判断力は人工知能の得意とするところであり、それに対して、創造力、指導力、決断力などは人間の得意とするところであると述べられています。
記憶力などではとても人間は人工知能には敵いません。従ってこれからは、記憶力、理解力、判断力などの能力を伸ばすことを考えるよりも、人工知能が(現時点では)不得意としている想像力、指導力、決断力などの能力を伸ばしていくことを考えた方が良い、と主張されています。
そのような想像力、指導力、決断力などのベースとなるのが「直観」だということですね。
今回、「パフォーマンスの方程式」を引用しましたが、これは、
生産性=「正確性」+「創造性」
の2つのパラメータで成り立っています。
人間は、創造性の部分において人工知能よりも優れていますが、ミスしてしまったりするので、正確性の部分では人工知能に劣ります。
両方を兼ね備えているに越したことはありませんが、これからは、「正確性」が求められるような仕事はどんどん人工知能に置き換えられていくでしょう。
従って、「創造性」が発揮される仕事に注力していくことが大切なのではないか、ということです。
2. すみ分けと共存
そう考えると私たちは、これからは「正確性」を要求される仕事については徐々に人工知能に任せることで「手放して」いって、それによって空いた時間で、創造力、指導力、決断力を必要とする仕事に注力していくのがベターだということになるでしょう。
これはつまり人工知能と人間がお互いの得意な所を活かして仕事を分担しあう。つまり、人工知能と人間との「すみ分け」が発生するということです。
最近は、「人工知能によって人間の仕事は奪われる」というような、危機感を煽るニュースや記事が多いように感じます。
実際それらの情報100%が嘘というわけではないでしょう。でも、私たちが自分自身の仕事を見つめなおしてみた時に、自分の仕事のどの部分が「将来的に人工知能によって代替されそうか(正確性を要する仕事か)」、またどの部分が「将来的にも代替されなさそうか(創造性を要する仕事か)」ということは今のうちからでも考えておくことができます。
ですから、今から「創造性を求められる仕事」の方に、自分のリソースをシフトさせて準備しておくことは可能なはずです。
それに加えてもう一点、考えておきたいのは、人工知能と人間の仕事を完全に分離してしまわない、ということです。
言い換えると、人工知能によって人間は自分の仕事の正確性にまつわる能力(記憶力、理解力、判断力)を高めることもできる、ということです。
人工知能には人間が感じる「恐怖心」がないといいます。
例えば、将棋や囲碁では人工知能がプロの棋士に勝利するようになりました。人間の棋士では恐怖を感じてしまい、とても指せないような手を人工知能は指してくるそうです。
これは人間の感じる「恐怖心」、つまり「生存本能」という「枠組み」を人工知能は最初から持っていないためです。
人間が潜在意識的に持っている枠組みの「外側の思考」が人工知能にはできるということです。
この、人間の思考の枠組みの「外側の思考」を、最初から「問題外」だと判断して、私たちが自分の能力を高めていくために使わない、というのはそれこそ「思考停止」だと思います。
実際、プロ棋士となってから怒涛の29連勝したことで話題になった中学生棋士の藤井四段などは、AIの打ち手から熱心に学んで、それを自分の将棋に取り入れた、という話がありますよね。
これまでは、私たち人間の知識を形式知化、言語化、数式化して人工知能に伝えることで、人工知能を賢くしてきました。
これからはその逆に、人工知能が生みだした新たな知識(=私たちの生存本能に基づく思考の外側にあるもの)を取り入れて、私たちが賢くなっていく。
そのような人工知能との共存(協力関係)もどんどん進めていくのがよいのではないでしょうか。
「教えて、それから、教えられる」
そのような学習のループがうまく作用することにより、私たちは正確性や創造性を鍛えながら、人工知能とすみ分け、そして共存共栄していくことができるのだと思います。
3. まとめ
・記憶力、理解力、判断力などにおいて、人間は人工知能に敵わない
その一方で、創造力、指導力、決断力などにおいては人間に一日の長がある
・パフォーマンスの方程式
生産性=正確性+創造性
・ 人工知能の得意なことは人工知能に任せることで「住み分け」て、
人間の能力を高めることにおいては人工知能と「協力」していくことが大切
〈今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい
・人間の人工知能に対する強みを知る
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・人工知能と人間の強みが明確に切り分けられている点が
参考になった
・創造力、指導力、決断力のベースとなる「直観」を高めていくための
コツが参考になった
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・「直観」を高めて、想像力、指導力、決断力を磨くことを意識する
・自分の仕事の中で、将来人工知能に任せた方が良い部分と、
自分でやった方が良い部分とを分けてみる
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・「直観」を高める努力を続け、創造性を発揮した仕事を行っている
・人間の「思考の枠外」にあえて踏み出して、自分を見つめなおしている
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