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物事を多面的にみるためにはどうすれば良いのか?『幕末入門』中村彰彦 著

 

幕末入門 (中公文庫)

幕末入門 (中公文庫)

 

 

 

今日の読書日記は、『幕末入門』から、物事を複眼的にみることについて。

 

 

あえてくりかえしますと、徳川家や会津藩、桑名藩を追討せよとの密勅は、以上のような諸点から偽勅であったと断定してよいのです。

 

思えば尊攘激派公卿は、文久三年八月十三日には孝明天皇が攘夷親征の軍を発するという内容の、とんでもない偽勅を発表したことがありました。

 

そのために八月十八日の政変によって京を追放されたというのに、またもやおなじ手法を使って最終の勝者となったのです。

 

その結果、滅びの道をたどることになった会津藩、それと運命をともにした新選組ないし佐幕派諸藩の士の気持はいかばかりだったでしょうか。

 

明治維新は文明開化の世とも謳(うた)われ、「日本の夜明け」といわれることもあります。

 

かつて東大の山内昌之教授は、私との対談のなかでこのような見方を「夜明け前史観」と名付け、その一面性に強い疑問を投げかけたことがありました。

 

しかし、江戸時代は暗くて、明治はあかるかったといっていいのでしょうか。

 

右のような偽文書によってひとつの国家システムが破壊され、別の体制が発足したことを思うと、私はその新体制を讃美する気にはとてもなれないのです。

 

贋金(にせがね)というものは、どんなに精巧にできていてもいつか贋金と見破られ、通用しなくなるものです。それを念頭に置いて、江戸時代と明治以後の天皇親政の時代の長さを比較してみるのも一興でしょう。

 

江戸時代は、家康が江戸に幕府をひらいた慶長八年(一六〇三)にスタートし、徳川慶喜が大政を奉還した慶応三年(一八六七)十月、あるいは朝廷が王政復古を宣言した同年十二月に幕を下ろしました。

 

その間に二百六十四年間の歳月が流れました。

 

対して小御所会議、あるいは明治元年(一八六八)にスタートしたと考えてもよい天皇親政の時代は、世界を敵にまわした大戦争のあげく、昭和二十年(一九四五)八月十五日に無残な最期を迎えました。

 

この間、わずかに七十六、七年。

 

むろん、明治、大正時代には日本を世界の一等国に育てあげようと、懸命に努力した日本人がたくさんあらわれました。

 

ですから私は日本の近代史を全否定する者ではありませんが、日本の近世(江戸時代)の長さと近代の短さを較べると、こうつぶやきたくなることもあるのです。

 

「やはり偽文書などで作られた国家の体制は、時間に対して耐久力がないのだなあ」と。

 

 

〈今日のコンテンツ〉

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1. 複眼的な視点を持つ

2. 胸をはっていられるか

3. まとめ

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1. 複眼的な視点を持つ

 

ペリー提督率いる「黒船」の浦賀来航から、十五代将軍徳川慶喜の大政奉還、明治新政府の樹立あたりまでの期間、いわゆる「幕末史」を勉強しようと思った時に、混乱してしまうことがあります。

 

それは薩摩藩や、長州藩、土佐藩などの諸藩がそれぞれ、一体どういう立場で、何を目指して活動しているのかという点です。例えば、「尊王攘夷」派なのか、徳川幕府寄り(佐幕)の立場なのか、あるいは「開国」派なのか。

 

このあたりのことを理解していないと、この期間に起きる数々の事件がなぜ起こったのかという背景や、事件と事件の因果関係が頭に入らなくなってしまいます。

 

 厄介なのは、長州藩や薩摩藩などの諸藩の政治的理念は、この期間中の最初から最後まで同じではなく「途中で変わる」ということ。そして同じ藩の中でも、藩のトップである藩主と、下級武士との間でも政治的理念が異なり、対立がある、ということです。

 

この本では、各藩ごとに幕末におけるその行動の由来が説明されています。そのため、教科書を読んだだけでは分かりにくい、「出来事と出来事のつながり」を理解するのにとても役立ちます。

 

本の中で取り上げられているのは、会津藩、土佐藩、長州藩、薩摩藩、そして新選組です。

 

個人的に面白いと思ったことは、関ケ原の合戦においてその藩は東軍だったか、西軍だったか(譜代大名か外様大名か)ということが、徳川幕府に対する態度(親幕府か、反幕府か)をその後の三百年に渡り規定しているということです。

 

これ以上の詳しい内容は本書に譲りますが、私たちが歴史を学ぶ時、気を付けないといけないのは、その歴史はいわゆる「勝者の歴史」だということです。

 

戦いに勝ち残った者が自分にとって都合の良いように歴史を記述していきます。そしてそれを私たちは学校で「事実」として教わります。

 

でも、それが本当に「真実」であったのかは分かりません。

 

教科書は歴史の研究が進むに連れて書き換えられていきますから、「昔は事実と信じられていたことが今となっては嘘だった」ということもありえるでしょう。

 

ですから書かれていることを「鵜呑みにしない」ということが私たちに求められます。

 

これは書かれていることに限らず、人から聞いた話であっても同じでしょう。

 

「その話は本当なのか?」

 

という疑いは常に持っていないといけないと思います。

 

そしてそれについて自分で情報収集をしたり調べてみる、ということが必要です。

 

 

幕末史においても、新しい日本の夜明けを目指した薩摩藩や長州藩の維新志士達はヒーローだとみなされることが多いです。それは多くのドラマや小説、漫画の主人公になっていることでもよく分かるでしょう。

 

ですが、考えようによっては、彼らはそれまでの徳川幕府の体制を転覆しようとしたテロリストである、という見方もできなくはないはずです。

 

このように、ある立場から考えた視点だけにとらわれるのではなく、別の立場からの視点でも同じ出来事を見てみることが大切なのではないでしょうか。

 

これは歴史の事象に限ったことではありません。

 

私たちはどうしても「自分が一番かわいい」ため、往々にして「自分本位の見方」しかできません。

 

「自分は正しい。あいつが悪い」

 

という視点です。

 

しかしながら、

 

「相手から見て自分がどう見えるか」

 

という相手からの視点をまずは意識してみるとどうでしょうか。

 

この視点を持つことで「自分の有り方、立ち居振る舞いは本当に正しいものか」を省みることができるようになります。

 

このような、一つの出来事や事象に対して、「多面的に」、「複眼的な視点から」考えてみることは物事をうまく進めていく上でとても大切な能力になってくると思います。

 

そして歴史を学ぶということは、そのような「多面的な視点から考える能力」を養う上で非常に良い教材となるのではないでしょうか。

 

 

2. 胸をはっていられるか

 

今回引用した箇所では、「討幕の密勅」が偽物であると断定されています。そしてそんな偽物の密勅によって打ち立てられた政権は、結局長続きしなかった、ということも述べられています。

 

討幕の密勅の内容はさておき、ここから私たちが学べる教訓は何でしょうか。

 

私はそれは、「やましさを抱えた行動は最終的に破滅をもたらす」ということだと思いました。

 

多数の人で構成されるこの社会においては、やはり嘘や虚飾でその場を取り繕っても、

いつかほころびが生じてくるのでしょう。

 

一時的にしのぐことはできても、最終的には甚大な損害を被ることになります。それは企業においても粉飾決算などの事件が起こることからも分かります。

 

であるならば、私たちが気をつけるようにしないといけないことは何でしょうか。

 

それは「自分の行動は胸を張って人に言うことができるものか?」を自問自答することだと思います。

 

これから起こそうとする何かの行動に対して、自分の胸に手を当てて考えてみて、もし、「やましい気持ち」を感じられるのであれば、それは「やらない方がよい」のではないかと思います。

 

「人の道に外れる」と自分が考えたのであれば、別の方法を考えるということです。

 

もちろん世の中は、そんな「きれいごと」だけでは成り立っていないのでしょうが、私たち一人一人が自分の行動に対して「胸を張っていられる」ようになれば、より良い社会が形作られていくのではないでしょうか。

 

自戒を込めて、記しておきます。

 

3. まとめ

 

・書かれていること、人から聞いた話について、

 「それは本当なのか?」を疑い、自分で調べてみる

 という姿勢が大切 

 

・物事を「複眼的」、「多面的」に考える能力を養うためには

 歴史を学ぶことが役に立つ

 

 ・自分の行動は「胸を張って人に言えるものか?」を

 自問自答することで道を踏み外してしまうことを防ぐことができる

 

 

〈今日の読書を行動に変えるための
 個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい

 

・幕末史に対する理解を深める

 


2. 読んでよかったこと、感じたこと

 

・各藩ごとの視点で説明されているため、

 情報を整理する上で非常に役立った

 

・一つの事件を多面的な立場からとらえることの

 重要性を学んだ

 


3. この本を読んで、自分は今から何をするか

 

・自分の日常生活の出来事を、それをとりまく

 様々な関係者の立場から考えてみる


4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか

 

・「客観的な視点の提供」に磨きがかかっている

 

・幕末史に対する理解と知識が増えている

 

・胸を張って、自信を持って行動することができている

 

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