スピードと度胸を磨くには?『空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか?』高城剛 著
空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか? ドローンを制する者は、世界を制す
- 作者: 高城剛
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/03/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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今日の読書日記は『空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか?』から、「スピード」と「博才感」について。
広東チャイニーズ・シリコンバレーには、自ら手を動かしてモノを生み出す「ものづくりのプロフェッショナル」と、14億の中国人から選りすぐった「中国の頭脳」が集まっている。
そこに世界から香港に集まった投資マネーが一緒になって、世界一のテクノロジー都市の原動力になっているのだ。
2015年初夏、僕は香港科技大学の李泽湘教授にお目にかかる好機を得た。前述したように、李氏はDJIの会長でもあり、広東チャイニーズ・シリコンバレーのロボティクス部門のキーマンである。食事のあと、彼は突然、僕たちに切り出した。
「香港に来て、一緒にドローン関連の会社を作らないか?」
李氏は、シリコンバレーのトップ級ファンドと香港政府から、すぐに数億円規模の資金が調達できると語っていた。そこで、翌月あたりに会社を立ち上げてくれないかと、僕ら数人のメンバーに突然言い出した。
これまで一緒にビジネスをしたこともない人物に、数億円程度の資金を提供するというオファーとこのスピード感こそが、今の中国である。おそらく、こうやって世界中の才能が中国に協力しているのだろう。
僕が中国に脅威を感じるのは、この「スピード」と「博才感」だ。人口や国力、資金ではない。一か八かに賭ける気概を世界で最も持っており、また強力な博才を持つ人物も多い、と、たくさんの人たちと会ってみて感じる。
例えば、日本の高名な大学教授たちは、いくら面白いからといっても、初めて会う人物にいきなり数億円の出資の話を持ちかけたりしないだろう。何度も何度も会って「持ち帰って検討」するだろうし、何か問題があっても自分の責任が回避できるようになるまでは、決定することはない。
すなわち、その話はその時点ですでに「投資」でも「博打」でもなんでもない「当たろうが失敗しようが、どうでもいいもの」になってしまっている。
だから、まったくリスクがない、国家からの補助金の奪い合いだけが横行することになる。100%成功するものがこの世にない以上、すべてのプロジェクトは博打だ。
だから、そのプロジェクトを成功に導こうとする最初の決定者は、経営者だろうが大学教授だろうが、博才が求められることになる。
言い換えれば、成功するかどうかわからないものに「賭ける度胸」だ。
日本の失われた25年とは、この「賭ける度胸」を失ったことに尽きる。その結果は現在の状況を冷静に見ると明らかだ。
2015年度のアジアの経済に関するアジア開発銀行のレポートを見れば、医療および通信機器、そして航空機など、アジアにおけるハイテク製品輸出において、中国が占める割合は、2000年の9.4%から2014年には43.7%まで伸びている。
一方、長らくトップを走ってきた日本は、2000年の25.5%から2014年は7.7%にまで下がってしまった。
おわかりのように、すでに中国は日本を抜くハイテク技術大国になったのである。
この成功は、中国の「賭ける度胸」の賜物にほかならない。よく言われる「大きな市場」はそれを支えたにすぎない。
そして、「スピード」だ。これは、このまま中国と日本のドローンビジネス、そしてその後のロボティクス産業全般の未来を指し示すように感じてならない。
「賭ける度胸」を持ち、果敢に新産業に挑むのか、言葉だけの特区を作り、補助金を奪い合うのか。どちらが未来の勝者か、答えは言うまでもない。
〈今日のコンテンツ〉
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1. 空の産業革命
2. 「スピード」と「賭ける度胸」
3. まとめ
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1. 空の産業革命
この本は、「ハイパーメディアクリエイター」という肩書を持つ著者が、最近ニュースでもよく話題に上るようになってきた「ドローン」を取り巻く状況について概観した本です。
現在のドローンの世界的三大メーカー(米:3Dロボティクス社、中:DJI社、仏:パロット社)の経営トップへのインタビュー、日本のドローンの現状や今後とるべき立ち位置、そしてドローンが普及することによって世界がどのように変わっていくのかという未来予測が述べられています。
Droneは「オス蜂」の意味で、元々は第二次世界大戦中に、無人の攻撃機として開発されたもののようです。
ただ、その時点では技術的に実戦投入は難しく、戦後、射撃訓練の的(ターゲット・ドローン)として製造されるようになりました。
その後2000年代に入りアフガニスタン戦争やイラク戦争などでは、米軍の偵察機や攻撃機として投入されるようになっています。
軍事目的でない、民間用のドローンは2010年にフランスのパロット社が発売した「AR.Drone」という商品によって広く知られるようになりました。これはiPhoneをコントローラーに使用できるという画期的なものでした。
ただ、新しいもの好きの方を除いて、私を含めて多くの人が「ドローン」という言葉をよく耳にするようになったのは2013年にAmazonが、「配達にドローンを使う」構想を発表してからではないかと思います。
そして今では、個人で手が届きそうな値段のものだと、数千円のものから数十万円ものまで、様々なドローンをネット上でも購入できるようになってきました。
新しいテクノロジーのため、まだまだ法律の整備が追いついていない面が多々ありますが、空中での写真撮影など、個人の趣味としての用途から、様々な産業上の応用も考えられています。
例えば、
空撮・・・・・報道、番組、宣伝、測量(3Dモデル作成)、点検、警備、捜索
輸送・・・・・物流、緊急輸送(医療機器)、ケーブル敷設
投下・・・・・農薬散布、種まき、消火活動
中継・・・・・通信の中継、遠隔操作の中継
漁業・・・・・養殖場の確認、赤潮の被害確認
サンプリング・・・・・放射線量計測など
スポーツ・・・・・ドローンレース
軍事・・・・・無人戦闘兵器
などの用途があります。
他にも、最近では、畑の作物を荒らす動物が近づいて来たらそれを検知して自動で動物に近づいて追い払う「動くかかし」のような使い方や、自殺の多い場所での挙動不審な人物の発見と保護のために使うことなどが検討されています。
このように幅広い分野への展開が考えられており、将来的な市場規模も大きいため、ドローンは「空の産業革命」と呼ばれています。
2. 「スピード」と「賭ける度胸」
本書からは、ドローンそれ自体の話ではなく、著者がドローンの世界的メーカーのひとつである中国のDJI社を訪問した時のエピソードを引用しました。
ここに書かれている通り、日本になくて中国にあるもの、それは「スピード」と「博才感」だということです。
博才(ばくさい)とは「博打(ばくち)に勝つ才能」という意味です。ここでは、「成功するかどうかわからないものに賭ける度胸」と言い換えられています。
まずは、「スピード」の方から順に考えてみましょう。
組織の中にいると、「一人では決められない」案件が多々発生します。
上司の決裁が必要だったり、会議出席者全員の同意を得る必要があったり。言わば「内向きの仕事」のために、「本当に生産的な仕事」に当てるべき時間を浪費してしまっている、そのように感じることがよくあります。
その本当の解決のためには、マネージャークラスから担当者クラスへの大幅な「権限移譲」が必要になると思います。
ただ、これには長年培われたその組織の文化・風土という問題もあり、すぐに対処できる組織は少数でしょう。
だとすると、私たちが「個人として行動のスピードを改善する」ということが最初に取り組めることになります。
これを考える時、仕事のタイプが2種類あることを意識しておくと良いと思います。
1つは「自分一人でも進められる仕事」。もう1つは「他者との調整が必要な仕事」です。
この2つで優先すべきはもちろん、「他者との調整が必要な仕事」の方です。何故なら、「他者との調整が必要な仕事」は完了するまでの時間が読みにくいからです。
このような仕事は、「自分の手元にボールがある」、つまり「自分がなんらかのアクションをとらないといけない」状態のまま、後回しにして放置すると、後々、色々な関係各所に迷惑をかけてしまう可能性があります。
ですから、まずは「自分の手元にあるボール」は、できるだけ早く相手に渡してしまう、ということが求められます。
それがひとしきり片付いてから、また相手からボールが返ってくるまでの間に、自分1人でも進められる仕事をできるだけ迅速に進めていくのです。
ごく簡単な例で言うと、例えば「メールの返信」などでもそうでしょう。返信が必要なメールは「できるだけ早く」返事を出してしまう。
返事を保留しないようにする、返事や対応が必要なメールをゼロにするという意識を持って行動するだけでも相当にスピードが改善されると思います。
このメリットはやるべきタスクが蓄積されにくいので、さまざまなことに思考が散乱せず、1つのことに集中しやすくなるため、生産性が高まるということです。
次に、もう1つの「博才感」つまり、「成功するかどうかわからないものに賭ける度胸」についても考えてみましょう。
私たちは「失敗を恐れる」生き物です。新しいこと、やったことのないことに挑戦することは誰でも怖いはずです。
スポーツでも試合前には必ず緊張する、という人も多いはずです。野球のイチロー選手がバッターボックスに入る前に決まったルーティンの動作をこなすのも、平常心で普段通りの力を発揮するため、という意味もあるでしょう。
失敗を恐れる私たちの問題となっているのは、行動ではなく、意識の方です。失敗するのは恥ずかしい、カッコ悪い、そのような気持ちは自分を委縮させます。
でも、どんな挑戦であっても最初からうまくできた人の方が少ないはずです。
子どもの頃を思い出してみて下さい。あなたは最初から鉄棒で「逆上がり」ができましたか?最初から補助輪無しの自転車に転ばずに乗ることができましたか?
多くの失敗を経て、それらのことができるようになったはずです。
発明王と言われたトーマス・エジソンは、たくさんの実験の失敗に対して、「私は失敗したのではなく、うまくいかない方法を見つけただけだ」ということを言っていました。
うまくいかない方法が分かる、というのは大きな前進であり成長です。次から同じ過ちを繰り返すことがないからです。
失敗をそのように捉えることができれば、行動の結果がどんなものであれ、前向きに受け止めることができるようになり、精神的にタフになっていきます。
そのように「うまくいかなったこと」を謙虚に受け止めつつも、速やかに次のアクションへと移っていける、そのような状態を目指していければと思います。
成功確率100%なんてありえません。ただ、前向きな考え方で取り組み続ければ、成功確率を0.01%ずつでも高めていくことはできるはずです。
もちろん、挑戦をする時に、全財産をつぎ込んで、「この挑戦が失敗したら破産する」みたいな極端なことは止めておくべきです。
あくまで「自身が許容できるリスクの範囲内での行動」としておいたほうが良いでしょう。
でも、「成功するかどうかわからないものに賭ける度胸」は、そのように失敗を前向きに受け止め、行動し続けることで、少しずつ許容できるリスクの範囲が広がり、その結果として身についてくるものではないかと思います。
3. まとめ
・ドローンは非常に幅広い分野への展開が期待されており、
「空の産業革命」と呼ばれている
・仕事のスピードを早めるには、まず「自分の手元にあるボール」を
手放してしまうことから始める
・博才感は、失敗を前向きにとらえ、そこから学び、行動し続ける中で
磨かれていく
〈今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい
・ドローンの概要とそれを取り巻く現状を知る
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・中国の成長とスピード感を知ることができた
・ドローンによる世界の変化のイメージを
よりリアルに感じることができるようになった。
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・とりあえず、安いドローンを1機買って
飛ばす練習をしてみる
・「スピード」と「博才感」を意識して仕事をする
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・行動の「スピード」が速くなり、仕事の生産性が高まっている
・「失敗」を謙虚に受け止めながら、委縮せずに行動を
続けられるようになっている
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