人工知能に対抗するための力とは?『アマゾンが描く2022年の世界』田中道昭 著
今日の読書日記は『アマゾンが描く2022年の世界』から、人工知能に対抗するための能力について。
AI時代においては、未来を創る力、つまりは自分で課題や問題を見つけ出して解決に導く力が必須です。しかし、現状では日本人にとって最も苦手なことといえるでしょう。
クリティカル・シンキングとは批判的思考法とも呼ばれますが、現状から課題を見出し、現状を分析したうえで、解決の仮説を立て、検証し、実行することです。
クリティカル・シンキングにおいて、自分で課題や問題を設定することを「イシューを立てる」「論点を立てる」といいます。
現実的に多くの仕事がAIに取って代わられる時代が到来したいまこそ、この「論点を立てる力」がより重要になってきているのです。
将来的には「論点を立てる力」さえもAIに取って代わられるようになるかもしれません。ただ最後の最後まで、人に、とくに経営者や組織のリーダーに必要とされ、AIがやる仕事と峻別されるのが、「論点を立てる力」を活かした仕事なのです。
「論点を立てる力」を生かした仕事こそが、AI時代の仕事といっても過言ではないでしょう。
ここで最も重要なのは、クリティカル・シンキングにおいては、「論点を立てる力」と「長期の目標設定を行う能力」とが同じスキルセットであるとされていることです。
実際にクリティカル・シンキングのプロセスでは、最初に目標やあるべき姿を定義し、次に何が問題であるのかを明確にし、最後に対策を考えていきます。
目標やあるべき姿を定義するというプロセスは、長期の目標設定を行うプロセスと同一なのです。
さらには人や組織が本当に取り組むべき課題を的確に設定していくためには、普段から問題意識を高め、大局観をもち、本質を見極める能力が不可欠です。
「自分や自分の組織においてはいま何を問いかけるべきであるのか」「自分や自分の組織においてはいま何に答えを出すべきであるのか」という視点は、長期の目標設定を行う視点と同一なのです。
アマゾンにおいて仕事を通じて養われる能力とは、実は「未来を創る力」であり、「論点を立てる力」であり、そして「長期の目標設定を行なう力」なのです。
そして、それらは同じスキルセットなのです。未来を創る力には、論点を立て、解決までの筋道を考える構想力、そしてそのための長期の目標設定が不可欠なのです。
〈今日のコンテンツ〉
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1. 課題を設定する
2. 未来を創る
3. まとめ
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1. 課題を設定する
アマゾンについて経営学者である著者が網羅的に分析した本です。どのようなビジネスモデルで、何をミッションやビジョンとして掲げて、現在の地位を築いてきたのか、また、これからどのような領域に進もうとしているのか(宇宙戦略!)についても解説されています。さらに今後、アマゾンと日本企業がどのように戦っていけばよいのか、その指針も示されています。
著者オリジナルのフレームワークを用いて分析を試みているため、その用語に慣れるまで少し分かりにくく感じるところもあります。それでも多くの資料にあたり、詳細に分析されているため、アマゾンの戦略について理解する上では非常に有意義な本です。
ちなみに、著者はアマゾンの最大のライバルとして中国の大企業「アリババ」を挙げており、アマゾンとの対比でその説明に1章を割いています。
日本人にとってアマゾンはよく利用するので馴染みがあっても、私も含めて、アリババにはまだあまり馴染みのない人の方が多いのではないかと思います。その点で、アリババについて書かれている第6章は興味深く読むことができました。
さて、今回は、アマゾンのリーダーシップとマネジメントについて書かれた章から引用しました。
アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスは人々に未来のありたい姿を語ることのできる「ビジョナリー」として知られています。
アマゾンは、この先訪れる未来を鮮明に思い描く「超長期思考」と、そこにたどり着くために超長期の目標から逆算した「超短期視点」での超高速のPDCAを回すことで事業を展開してきました。
多くの成功した経営者は、足元の仕事を大切にしつつも、ミッションやビジョンを重要だと考え、100年などといった超長期で自分のミッションを考えているそうです。
『LIFE SHIFT』という本がベストセラーになり、テクノロジーの進歩により「人生100年時代」が到来した、とよく耳にするようになりました。そんな「100年の計」を考えられるビジョナリーになるために必要なのは「自分の人生だけで完結しないくらい壮大な物語」を語れることなのかもしれないと思いました。
そんな壮大な夢を頭の中で思い描くだけでなく、絵に書いたり、言葉にして、人に示すことができたとしたらどうでしょうか?
私たちの描く「私たちの後まで続く物語」に共感してくれる人も中にはいるはずです。
私たちや私たちの物語に共感してくれた仲間達は、何を目指して何を行なうのか?これを決めることが「課題を設定する」ということになります。
そして現在のところ、人工知能は自分でこのような課題設定ができません。与えられた目標を実現するための解を学習により発見することはできても、人工知能自体には自発的な「夢」とか「目標」とかは、(まだ今のところ)ないのです。
アマゾンで何かを買うときの「あなたへのおすすめ」のような「リコメンデーション機能」や、「Amazon echo」などのスマートスピーカーで取得したデータの解析には人工知能が大活躍しています。今後も、人工知能が活躍する領域は広がっていく一方でしょう。
そんな中で、私たちが人工知能に勝ることができるのは、「世の中の課題を発見できる能力」、「解決すべき問いを立てることのできる能力」だと言っても良いと思います。
正確性やスピードの点では、人間は人工知能には絶対に敵いません。一方で、人工知能は答えを見つけるのは上手ですが、問題そのものを作ることはできません。
それは、私たちが問題だと認識しないこと(課題設定をしないこと)は、そもそも問題として人工知能に解いてもらう必要がないからです。
逆に言うと、将来的に人工知能が「自分の意思」を持ち、自分で課題設定ができるようになったとしたら、
その人工知能が設定する課題は、私たち人間が考える課題とはかけ離れたものになる可能性があります。
従って、その課題を解決することが「人間にとって有用か」どうかは分かりません。
となると、100年、あるいは1000年先の未来を思い描き、そこに到達するための「地図を描く仕事」は、人間が手放してはいけないのだと思います。
2. 未来を創る
著者は、想像した未来を創る力=超長期的な目標設定の力=課題を設定する力であり、これこそがAI時代の仕事だと述べています。
そして、自ら問いかけることとして、
という2つの視点を与えてくれています。
前者は、「望む未来の実現に対してそもそもどういう課題を設定するのが良いのか?」を考えることです 。そして後者は「望む未来の実現に対して今、優先して取り組むべき課題は何か?」を考えることです。
これらの問いは言わば「方位磁石」のようなものです。私たちが描く「壮大な物語」へと向かう道からはずれて迷ってしまわないために、常日頃からこれらの問いを自分に投げかけることで、今の立ち位置を確認することができるのです。
「問い」、つまり「課題設定」という「方位磁石」を使うことで、私たちは未来に向かって、明後日の方向に進むことなく向かうことができるのです。自分で自分の望む未来を創っていくことができるのです。こまめに確認すれば、その分、大きく道から外れることも少なくなるでしょう。
私たちの幸せの形は人それぞれ違います。ですから、そこへ向かう「方位磁石」も「完全オーダーメイド」のものが必要です。その「方位磁石」を人工知能に任せてしまっても良いのでしょうか。
人工知能は私たちの好みを学習によって学ぶことができても、その「最適とされる提案」が私たちの幸せにつながっているという保証はしてくれないし、責任をとってもくれないのです。
3. まとめ
・ビジョナリーになるためには「自分の人生で完結しないくらいの壮大な物語」を
語れるようになること
・ 私たちが人工知能に勝ることのできるのは、「世の中の課題を発見できる能力」や
「解決すべき問いを立てることのできる能力」
・「問い」、つまり「課題設定」という「方位磁石」を使うことで、
私たちは自分で自分の望む未来を創っていくことができる
〈今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい
・アマゾンの現状や戦略、ビジネスモデル等について学ぶ
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・アマゾンの現状を実現する強さの根源について学ぶことができた
・あまりよく知らなかったアリババについても知識を得ることができた
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・課題設定力を磨く
・クリティカルシンキングについて勉強する
・自分の人生だけでは完結しない壮大な夢を考えてみる
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・問いを立てる力が今以上に研ぎ澄まされている
・大きな夢を語れるようになっている
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