失敗を減らすためにはどうすればいいのか? 『幕末史』半藤一利 著
今日の読書日記は『幕末史』から、備えておくことについて。
ここで繰り返しますが、日本の幕府はそれほど無能ではなく、西欧列強が次々に東南アジアを植民地にしているといった世界情勢をかなり多く取り入れていました。
ペリー来航については、嘉永三年(一八五〇)ですから、実際にやって来る三年前にすでに情報がもたらされていたのです。
日本と長崎の港に限って交際しているのはオランダであると知っているアメリカは、「これから日本に行って交渉をしたい、仲介をしてくれないか」とオランダに頼んだらしい。
これをオランダは断りまして、それで長崎のオランダ商館長から長崎奉行を通して「アメリカはいずれ艦隊を率いて日本に行くだろう」と幕府に伝わったわけです。
その後、なにかにつけてオランダはアメリカ側から情報を得ては日本に知らせます。それは計六回に上りますが、その最初が嘉永三年であり、ペリー提督の名が出たのが嘉永五年、三回目だったそうです。
さらに来航のひと月前、嘉永六年五月になると、ペリー艦隊四隻が琉球に寄り、小笠原を調査して日本に向かうという情報がもたらされます。
アメリカは本気になっており、日本はフンドシをしっかり締めてかからないと東南アジアの国々と同様、大変なことになる、と知らされています。
一方でオランダは、「どうだ、我々に門戸を開いているだけでなく、本格的な貿易などの条約を結んだらどうか」と持ちかけますが、これを日本はつれなく断ります。
鎖国の方針を変えるつもりはなく、付き合いはするが特別な通商条約を結ぶ気はないと。
しかし、黒船がいざ実際に来てみると、その兵力、武器の威力が巨大なものであることがわかりました。
浦賀奉行配下、観音崎にある六門の砲台は旧式で、しかも弾丸は十五発しかない、とても太刀打ちできません。承知はしていたけれども大狼狽した、というのが日本のその時の実態でした。
これは、日本人の通弊といってもいいのではないでしょうか。
太平洋戦争の時もそうでした。日本人は往々にして、たしかな情報が入ってきていても、起きたら困ることは起きないことにしようじゃないか、いやこれは起きないに違いない、そうに決まっている、大丈夫、これは起きない、となってしまうんです。
幕末にペリーが来るという情報は入っていた。それが六回に及んでいたにもかかわらず、来たら困るから来ないんだと思い込もうとしていた。
ですがやっぱり来てしまった。それでどうしようもなくなって、てんやわんやの大騒ぎになるわけです。
〈今日のコンテンツ〉
ーーーーーーーーーーーーーーーー
1. 歴史を学ぶということ
2. 失敗を繰り返さないために
3. まとめ
ーーーーーーーーーーーーーーーー
1. 歴史を学ぶということ
先に語句の意味を確認しておきます。
引用文中の「通弊(つうへい)」は、「一般に共通してみられる弊害」のことです(大辞泉より)。
タイトル通り、江戸時代末期、黒船の来航による開国から大政奉還を経て、西南戦争に至るまでの歴史について書かれている本です。もともと 、なにかの講座で著者が講師として話された内容を底本にしているということで、語り口調で非常に読みやすくなっています。
高校生の頃、私は受験科目としての社会科は「世界史」を選択していました。私の通っていた高校では「世界史」の他に「日本史」と「地理」が選択可能でした。
私が「世界史」を選択したのは、「地理」がどうも肌に合わなかったのと、「日本史」は人名や地名の漢字を間違えると点数が取れない、という理由でした。いわゆる消去法です。
大抵の高校では、世界史でも日本史でも、学ぶ時代が後の方(近現代)になればなるほど、授業も駆け足で通りすぎる感じで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。
近現代の場合は、例え日本史と言えども、もはや世界情勢の中での日本の状況を考えないわけにはいかず、今回引用した「黒船来航」に始まり、複雑に絡み合う各国の思惑の中に、日本も否応無しに取り込まれていくことになります。
近現代史は、国内だけでなく、世界情勢について考えないと理解できないので複雑であること。また、近い時代は現在と似ている部分が多く、あまり歴史的ロマンをかんじられないこと。これらのような理由から敬遠される方も多いのではないかと思います。
高校生の頃、世界史を学んでいた私もやはりそう考えていました。「第一次世界大戦」当時の列強の状況を勉強するよりも、「ピラミッド」や「マチュピチュ」の古代遺跡の方が、現代とあまりにも違いすぎてロマンがあり、面白く感じられるのです。
どの時代にも学ぶ上で優劣はありません。面白さを感じる時代も人それぞれで良いのだと思います。
ですが、今の世界の体制を形成しているきっかけとなっているのは「近現代史」です。どのような経緯で今の世界や日本があるのか。紛争などの世界的、社会的問題の「根源」はどこで発生したのか。
そのようなことを考えていくための「実用的な教養」として歴史を捉えるのであれば、例え、それほどのロマンや魅力を感じられないとしても、やはり「近現代史」は学んでおく必要があるのではないでしょうか。
「実用的な」と書きましたが、歴史を学ぶことは「不要不急」の用であり、明日の仕事の成果には直結しません。
「教養」と書くと、「いつか時間ができたら始めよう」という程度の、確かに大切だけれども、優先順位の低い取り組みとして捉えられるでしょう。
「今後、いつ、教養としての歴史(近現代史)の勉強を始めることができるだろうか?」と自問自答してみた時に、「時間に余裕のできた定年後かな?」という考えに至りました。
「果たして、それでいいのだろうか?」とさらに考えてみたところ、確かに自分の知識欲は満たせるだろうけれども、定年後に歴史の勉強を始めたのでは、実社会に対してあまり役立てていく、貢献していくことができないのではないか、とも思ったのです。
で、あるならば、始めるのは早い方がいい。ということで、近現代史の勉強を始めることにしました。そのとっかかりとして、私のような歴史初心者でも読みやすい今回の本を読み始めたのです。
2. 失敗を繰り返さないために
人類の歴史が始まってから、どれだけ時代が流れても、人は過去にあったものと同じような過ちを繰り返してしまいます。
ここに歴史を学ぶ大きな意味があります。今回引用した部分では、「起きたら困ることは起きないことにしてしまう日本人の通弊がある」と述べられています。
自分が見たくないものは見ない、というのが日本人に共通する性質だということです。
そのせいで、黒船来航時の失敗を、太平洋戦争時にも繰り返したということです。
ここまで大きなレベルの話でなくとも、私たち個人の日常生活のレベルでも、考えておくべきこと、やっておくべきことを「先送り」にしてしまったために、痛い目にあったという経験はどなたでもお持ちではないかと思います。
日本の年金制度は既に破綻していると言われていますし、最近のニュースでは、将来人工知能によって人間の仕事のほとんどが失われる、というような話もあります。
そのような自分にとってあまり喜ばしくない「不都合な未来」が本当に現実になってしまった時のことを、普段からどれだけ考えることができているでしょうか。
忙しさにかまけて「先送り」にしてしまってはいないでしょうか。
ビジネス書なんかには、その著者の経験に基づく「成功法則」が書かれています。ですが、著者の「失敗事例」について書かれている本というのはあまり見かけたことがありません。
ですが、私たちが本当に学ばないといけないのは、「成功事例」よりもむしろ、「こうやったら絶対に失敗する」という行動や事例の方ではないでしょうか。
有難いことに、私たちはそのような「こうやったら失敗する」という事例を、「先人達の失敗事例集」=「歴史」の中から学び取り、教訓を導き出すことができるのです。
自分自身で経験する失敗は、もちろん一番大きな学びとなりますが、数が限られています。せいぜい数十年程度のものです。
それに対して、「歴史」の「失敗事例集」はその百倍以上、現時点で「数千年分」存在しているわけです。
ですから、これを私たちが生きていく上で活用していかないのは、非常にもったいないのではないか、そう思うのです。
私たち一人一人が、これから起こるかもしれない将来の失敗の数を減らし、より良い人生を描いていくためにも。
3. まとめ
・「近現代史」は、現在の世界や日本の情勢について考えるための
「実用的な教養」となる
・日本人には、「自分が起きたら困ることは起きないことにしてしまう」
という通弊があるので注意が必要
・「歴史」=「過去数千年におよぶ人類の失敗事例集」と捉えると、
これを自分の失敗を減らすために活用しないのはとてももったいない
〈今日の読書を行動に変えるための
個人的チャレンジシート〉
ーーーーーーーーーーーーーーーー
1.この本を読んだ目的、ねらい
・幕末史の概要を掴む
2. 読んでよかったこと、感じたこと
・おおまかな歴史の流れを掴むことができた
・魅力的な数々の登場人物について興味をもったので、
もっと掘り下げて勉強してみたいと感じた
3. この本を読んで、自分は今から何をするか
・骨組みとして、まずは大まかな流れを掴み、
それから詳細について肉付けしていく
・浮かんだ疑問点について調べていく
4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか
・幕末~明治の歴史について、人に語れるレベルになっている
・事件の一つ一つから教訓を引き出し、自分の失敗の数を
減らすことができている
ーーーーーーーーーーーーーーーー
<お知らせ >
このブログのメルマガ版の配信を希望される場合は、
下記リンク先からご登録をお願い致します。