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技術の発展とともに成長していくためには? 読書日記『シンギュラリティ・ビジネス』齋藤和紀 著

 

シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件 (幻冬舎新書)

シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件 (幻冬舎新書)

 

 

 

今日の読書日記は、『シンギュラリティ・ビジネス』から、エクスポネンシャル(指数関数的)な技術進化がもたらす連鎖反応について。

 

 

いま生きている人間の大多数が目撃できるであろう近未来に、ほとんどの病気が治療可能になり、原子プリンターがあらゆる製品を生産し、AIが人間のように問題解決をするところまでテクノロジーが進化するといわれても、にわかには信じられないだろうと思います。

 

しかしそれは、私たちが物事の進化をリニア(直線的)にイメージする習慣を持っているからです。

 

地球の生命も、人類も、人類のテクノロジーも、すべてエクスポネンシャルに進化を遂げてきました。カーツワイルの予測を「夢物語」のように感じた人もいるでしょうが、じつは直線的な進化のほうが人間の抱きやすい「幻想」なのであって、エクスポネンシャルな進化の方が「現実」なのです。

 

そこで、エクスポネンシャルな進化がどのようなものかを理解するための「6D」というフレームワークを紹介することにしましょう。

 

ディアマンディスは、物事がエクスポネンシャルに成長するとき、その多くのケースで「D」の頭文字を持つ次の六つの事象が連鎖反応的に起こるといいます。

 

1 デジタル化(Digitalization)

2 潜行(Deception)

3 破壊(Disruption)

4 非収益化(Demonetization)

5 非物質化(Dematerialization)

6 大衆化(Democratization)

 

一番目の「デジタル化」から順に説明していきましょう。

 

連続的でとらえどころのないアナログな物事を、きちんと数えられる「データ」として扱えるようになれば、科学的に研究を進めることもできます。

 

デジタル化が起きた段階では、あまり大きなインパクトが生じない――これはエクスポネンシャルな進化の大きな特徴といえます。指数関数のグラフは、初期段階ではほとんど上昇しません。

 

これが、「6D」の二番目に起こる「潜行」にほかなりません。

 

英語の「Deception」は「欺瞞(ぎまん)」「詐欺」が本来の意味です。デジタル化によって派手なイノベーションが起きると思っていた人々が、詐欺師に騙されたような気分になる。

 

しかしエクスポネンシャルな進化は、やがて次の段階を迎えます。当初は横軸と平行に推移していたグラフが徐々に上向きになり、あるポイントで直線的な成長予想を突破する。

 

ディアマンディスはこの段階を「破壊」と呼びました。そこで破壊されるのは、既存の市場です。

 

ディアマンディスは「破壊」に続く四番目のDとして「非収益化(Demonetization)]を挙げました。

 

ここで非収益化が起こるのは、その技術が生みだした商品そのものではありません。

 

かつて長距離電話には高額な料金がかかりましたが、いまはSkypeやLINEの無料通話機能などによって非収益化され、完全に過去のものになりました。

 

この「非収益化」が物やサービスへの対価が消えることを意味するのに対して、五番目のDである「非物質化(Dematerialization)」は物やサービスそのものが消えることを意味しています。

 

自分の手元にあるスマートフォンを開いてみれば、それがどれだけの機械を非物質化したかよくわかります。電話機、ICレコーダー、ゲーム機、テレビ、CDプレーヤーなど、多くの物がそこに取り込まれて消えてしまったのです。

 

しかも、アプリ化したそれぞれの機能は、かつての「機械」よりもはるかに安く手に入るようになりました。これが六番目のD、「大衆化(Democratization)」にほかなりません。

 

カメラのように昔は富裕層しか手にできなかった高価な物やサービスが非収益化と非物質化による当然の結果として、誰にでも手に入るものになる。

 

これがエクスポネンシャルな技術進化がもたらす連鎖反応の最終段階です。

 

この「6D」を提唱するディアマンディスは、こんなこともいっています。

 

「直線的な思考しかできない者にとって、六つのDは六人の死神(Death)にほかならない」

 

 

〈今日のコンテンツ〉

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1. 加速する技術

2. 直線的に生きるか、指数関数的に生きるか

3. まとめ

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1. 加速する技術

 

「シンギュラリティ」という言葉を世に広めたレイ・カーツワイルが発起人となり、世の中の社会課題をテクノロジーにより解決するために、米国に設立された「シンギュラリティ大学」。

 

本書は、そのシンギュラリティ大学で学ばれた著者により、これからの世界がテクノロジーの発展によりどのように変わっていくのかが書かれた本です。

 

「太陽光発電の進歩により、エネルギーにかかる費用が無料になる」など、興味深い予測が色々と紹介されています。 

 

今回は、未来予測の部分ではなく、テクノロジーの進化がどのように進行するか、というフレームワーク(思考の枠組み)、「エクスポネンシャル(指数関数的な成長)の6つのD」の説明部分から引用しました。

 

本書の中では、デジタルカメラの事例が紹介されています。当初、デジタルカメラが始めて世に出た時は、画素数も少なく、フィルムを使って写真を撮る銀塩カメラの代わりになるとは考えられていませんでした。

 

しかし、技術の進歩により、やがて銀塩カメラに負けない画質の写真が撮れるようになります。しかもデジタルカメラの場合、フィルムも不必要で、取り直しもできますから、銀塩カメラのシェアがどんどんデジタルカメラの方にシフトしていきました。

 

ところが、この「デジタル」の技術はさらに改良されて、携帯電話に搭載することができるようになりました。これも、最初の色数は256色程度のものだったと思います。

 

そこから、また技術の進歩により、携帯電話に搭載されたカメラも画素数がどんどん増えて、日常的に写真を撮るのには困らない程度の解像度を得られるようになりました。

 

こうして、デジタルカメラのシェアも、プロ仕様の一眼レフカメラなどを除いて、携帯電話に奪われていくことになりました。

 

つまり、カメラがアナログから「デジタル化」して、技術進歩により「潜行」から「破壊」のステージに移り、さらには当初存在した銀塩カメラ事業を「非収益化」してしまった。

 

そして、カメラというもの自体が携帯電話やスマートフォンに取り込まれることで「非物質化」して「大衆化」した、という流れです。

 

 

今、人工知能や3Dプリンタ、ドローンなど、新しく面白い技術がたくさん登場しています。これらが果たして、上記の6つのDのどのステージにあるのか。それを考えておくことは、私たちがこれからの世界の変化を考えて、その中で生きていく上でとても大切なことになるでしょう。

 

今現在、直接技術に関わる仕事をしていないとしても、テクノロジーの加速的な成長とそれにともなう社会変化は、誰もが巻き込まれる事象です。

 

従って、加速度的にテクノロジーが進化した未来を想像して、そこでどのように自分が生きているのが望ましいのかを考え、そこから逆算的に「では、今、自分はどうするのが良いのか?」を考えておく。

 

そういったことが必要なのではないかと思います。

 

 

2. 直線的に生きるか、指数関数的に生きるか

 

また、エクスポネンシャル(指数関数的)な曲線は、テクノロジーの進歩以外にも適用してみることができるのではないかと思います。

 

分かりやすいのは個人的な成長について考える時でしょう。

 

「成長曲線」というものがあります。実はこの曲線も指数関数的な形に描かれるのです。

 

例えば、英語の勉強をする時のことを考えてみて下さい。

 

英会話ができるようになりたいけれど、リスニングの勉強を始めた当初は、ネイティブが何を言っているのか全然聞き取れません。

 

2カ月、3カ月、半年勉強を続けても、まだ全然聞き取れないかもしれません。これは指数関数の最初の直線的な部分に相当します。

 

ところが、です。あきらめずにリスニングの勉強を続けていると、ある時、いきなり、ネイティブスピーカーが話した言葉が「即座に理解できる」という体験が訪れます。

 

私の個人的な体験では、リスニングの学習を続けていて、「ネイティブが英語で冗談を言った瞬間に思わず笑ってしまった」ということがありました。

 

つまりは、英語を英語として理解する下地が形成されてきた、そしてそれを実感した、ということです。

 

これが、いわゆる指数関数的な上昇の曲線を描き出す始まりの地点です。ここまで到達すると、成長スピードも加速度的に速くなってきます。

 

ある人によると勉強の場合は、この地点に辿り着くためには、毎日勉強を続けたとして「15カ月」かかるという話があります。天才と呼ばれる人たちは、最低「10000時間」の修練を積んでいた、という話も有名ですね。

 

ただ、難しいのは、成長というのはなかなか実感できるものではないということです。従って、多くの人は自分が「変化点」に差し掛かるのを待てずに、諦めて勉強を止めてしまうのです。

 

また、指数関数的な成長の「変化点」に差し掛かるまでの期間は、当然、その人の置かれた状況によっても違います。

 

毎日3時間勉強できる、という人もいるでしょうし、15分しか時間がない、という人もいるでしょう。

 

ですから、モチベーションを無くさずに、粘り強く、指数関数的な成長がやがて自分にも訪れることを信じて、その勉強を続けることができるか、そのような忍耐が問われている、ということでもあります。

 

続けることができない人は周りからどんどん「脱落」していきますから、ある意味「チキンレース」ということもできるでしょう。

 

成長と成果を信じて、継続することのできる人だけが、エクスポネンシャルな成長の「変化点」まで到達することができるのです。

 

成長と成果を求めるなら必ず必要となる「潜行」の期間。これはやがて、今の自己の「破壊」を引き起こすために避けられないものです。

 

また、その先の「非収益化」と「非物質化」は学習による「無形資産」の形成、そして最後の「大衆化」のステージはそれまでの学習による「社会貢献」を行っていく段階と考えることもできるのではないでしょうか。

 

そして、できるならばそこに到るまでの「潜行」の日々も楽しんでいきたいですよね。

 

人間は「希望」の中にも「幸福」を見出せる生き物です。ここでも、テクノロジーの未来を考える場合と同様に、未来のありたい姿からの「逆算」で自分を見つめなおしてみる。

 

そうすることで日々の活力が湧いてくるのではないでしょうか。

 

テクノロジーの進歩は私たちの成長も加速してくれるものだと個人的には思うのです。

それも直線的にではなく指数関数的に。

 

 

その波にうまく乗るための心の準備はできていますか?

 

振り落とされないための忍耐力はありますか?

 

 

3. まとめ

 

・テクノロジーのエクスポネンシャルな連鎖反応を

 表す「6つのD」は、

 

1 デジタル化(Digitalization)

2 潜行(Deception)

3 破壊(Disruption)

4 非収益化(Demonetization)

5 非物質化(Dematerialization)

6 大衆化(Democratization)

 

・個人の成長を表す「成長曲線」もエクスポネンシャルな

 形状をしている

 

・エクスポネンシャルに成長していくためには、

 「忍耐力」が求められる

 

 

〈今日の読書を行動に変えるための
 個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい

 

・シンギュラリティ大学について概要を知りたい


2. 読んでよかったこと、感じたこと

 

・今後の社会がテクノロジーによってどのように変化していくのか、

 それに対する知見を手に入れることができた

 

・「6つのD」という新しいフレームワークを学んだ 

 


3. この本を読んで、自分は今から何をするか

 

・5年後、10年後のテクノロジーが引き起こす

 社会変化について考えてみる

 

・自分がシンギュラリティ大学で学ぶためには

 何が必要かを考えてみる


4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか

 

・ある分野で「変化点」に差し掛かったことを

 実感できている

 

・10年後の社会課題を解決するテクノロジーの

 アイデアを1つ、人に説明できる形にまとめている

 

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