読書尚友

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価値主義の時代に大切なことは?『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤航陽 著

今日の読書日記は『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』から、新しい時代の生存戦略について。

 

 

お金や経済の世界において最もインパクトのある現象、大きな変化の流れとは何でしょうか?もちろん100年という単位で考えると難しいですが、これから10年という単位で考えれば、それは「分散化」です。

 

分散化が進んでいくと情報やものの仲介だけでは価値を発揮できず、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力を持つようになっていきます。

 

この「分散化」という現象は近代までの社会システムの前提を全否定する大きなパラダイムシフトであり、中央集権的な管理者からネットワークを構成する個人への権力の逆流、「下剋上」のようなものです。

 

 

ビットコインがよくできているのは、通貨発行益を受ける対象まで分散化が進んでいる点です。

 

特定の存在が経済システム全体をコントロールしようとすると、それに反対する人が離反して経済圏全体の価値が下がってしまうか、分裂してしまうことになるので、独占や支配が難しい仕組みになっています。

 

ビットコインは、ほぼ完全に分散化が進んだ経済システムとして機能し始めており、まるで自然界の生態系のように有機的であり柔軟なネットワークになりつつあります。

 

今後、シェアリングエコノミーやトークンエコノミーも進化していくと、中央に一切の管理者が不在で自動的に回り、拡大し続ける有機的なシステムとして存在することが予想されます。

 

 

ここからもう1つの重要な流れである「自動化」について簡単に触れておきます。

 

特にディープラーニングと言われる手法は、膨大なデータを機械に学習させることで特徴量の抽出を自動で行うことができます。

 

膨大なデータさえあれば現在人間がやっている知的労働の大半が自動化されるようになると知性さえも人間に固有の強みではなくなってしまう可能性が高いです。

 

世の中に膨大なデータが溢れたことで進んでいく「自動化」と、ネットワーク型社会に移行することで起きる「分散化」という2つの大きな流れは、今後の10年を考える上で非常に重要になります。

 

そして、この2つが混ざった時に起こる「自立分散」というコンセプトが、多くの産業のビジネスモデルを覆すことになると私は思っています。

 

「自立分散」とはあまり聞きなれない言葉ですが、全体を統合する中枢機能を持たず、自立的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能する仕組みと定義されています。

 

前述した自然界のように、絶対的な支配者や管理者がいるわけでもなく、個々の存在がバラバラに行動しているはずなのに、うまい具合にバランスを取りながら回っているシステムのことです。

 

 

ブロックチェーンなどの技術が中央集権的な多くの組織・事業・システムを分散化し、ディープラーニングなどの自動化技術が人間の代わりに全体を自動最適化するように動き、この自律分散型の仕組みが次世代の成功モデルとして普及していく可能性が高いです。

 

そしてシェアリングエコノミー、ブロックチェーン、深層学習、IoTなどは今は一見バラバラな技術トレンドのように見えますが、自立分散型の仕組みを実現するパーツであったことが徐々に明らかになってくると私は思っています。

 

 

〈今日のコンテンツ〉

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1. 分散化と自動化

2. 経済の民主化と価値主義の到来

3. まとめ

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1. 分散化と自動化

 

ブロックチェーンというものを昨年初めて知ってから、それによってどんな新しいことができるようになるのか、ニュースなどをチェックするようにしていました。

 

見ていて分かったのは、これは個と個を「直接繋ぐ」ことができる技術だということです。つまり、「仲介者」や「仲介する場所」を必要としません。

 

ということは、これからどういうことが予測できるかというと、仲介することで、あるいは仲介する場所を提供することで「手数料」を得るタイプのビジネスモデルは淘汰される可能性があるということです。

 

何年か前、「プラットフォーム戦略」という「仲介する場」を作ることで稼ぐビジネスモデルがもてはやされたことがありました。

 

今ではまた、「シェアリングエコノミー」と言われるもの、例えば「Uber」や「Airbnb」などのビジネスが隆盛を極めています。

 

上記の2つは、個人の車や物件など「空いているものを有効活用」するための「場」を提供することで急成長してきました。

 

車や部屋を利用したい人と利用してもらいたい人をホームページを通して結びつける、いわゆる「マッチングサービス」です。

 

契約が成立すると、いくらかの「手数料」が会社に入るということになります。とても良くできている仕組みです。

 

ですが、ブロックチェーンの登場により、少し風向きが変わってきました。

 

最初に書いた通り、ブロックチェーンは個人と個人を直接結びつけることができます。

 

そうすると、マッチングサービスのような「場」がなくても、個人同士で契約を結ぶことが可能になります。

 

利用者としては、その分、これまで仲介業者に支払っていた「手数料」を払う必要がなくなるのです。

 

従って、現存している何かの取引を行うための「プラットフォーム」だとか「シェアリングエコノミー」と呼ばれるビジネスモデルは、ブロックチェーンを利用した新しい仕組みに置き換えられていくと考えられます。実際にそのようなビジネスも既にいくつか登場しています。

 

情報がある場所に「一極集中」しており、人はそこに集まることで情報を利用していた、というのがこれまでの姿でした。「プラットフォーム」や「ハブ」と言われるようなものがそれです。

 

今回引用した部分にも書かれている通り、今後はブロックチェーンによって情報も「分散化」が進みます。情報が「分散化」しても社会のシステムが回るようになっていくのです。

 

それはつまり、情報を集積することで発展してきた既存の企業や団体といった「組織」も解体されていくということでもあります。今、「リモートワーク」や「在宅勤務」や「ノマド」などといった言い方をされる働き方がありますが、今後はその方が多数派になっていくことも予想されます。

 

 

ビジネスの分散化、組織の分散化により既存の「境界線」がどんどん曖昧になっていく、ということがこれからの大きな潮流になる、というのは私も感覚的に理解していました。

 

 この本の著者は「分散化」だけでなく、さらに先も見越しており、人工知能による「自動化」が進むことも述べられています。その結果として「自立分散型」の社会が到来することを予測されています。

 

直観的なイメージで述べると、「人の手を介さずとも、ものごとが最適化され、調和が保たれるシステム」です。

 

 そこまで「自立分散化」が進むと、私たち人間は働かなくてよい時代になっているかもしれません。

 

 

2. 経済の民主化と価値主義の到来 

 

実際、本書でも、テクノロジーの発展により人間が働かなくてよくなった時代、ベーシックインカムが支給されるようになった時代について考察されています。

 

ベーシックインカムが普及した場合、働かなくても生活に困ることはなくなるため、お金に対する今の常識や価値観が崩れることになります。お金持ちであること、お金を稼げる能力があることが大きな強みではなくなってしまう時代です。

 

そこで著者が主張されているのは、現在の資本主義からの転換です。それを「価値主義」という呼び方で説明されています。

 

価値主義で扱われる価値には、

 

①有用性としての価値(今の資本主義における価値と同じもの)

 

に加えて、

 

②人間の内面的な価値(愛情・共感・興奮・好意・信頼など)

 

や、

 

③全体の持続性を高めるような社会的な価値

 

があるそうです。

 

これまでの資本主義では「価値」として扱われなかった2番や3番の価値にも、テクノロジーを使って光を当てていこうとする考え方です。

 

既存の資本主義の経済圏が完全に新しく置き換えられるというわけではなく、価値主義では、内面的な価値に対する独自の経済圏や、社会的な価値に対する独自の経済圏も私たち自身で新たに作ることができるし、生まれてきます。このことを著者は「経済の民主化」と述べられています。

 

そのような新しい経済圏は、ビットコインなどの仮想通貨を発行する「トークンエコノミー」によって実現することができます。

 

現実のお金が流通する今の経済圏だけでなく、さまざまな「価値」に対して独自に流通する仮想通貨の経済圏が今後も増加していったとしたら、自分が所有している内面的価値や社会的価値といった新しい「価値」が有利に働く経済圏の「選択肢」が増えることになります。これは新しい形の「資産分散」と考えることもできるでしょう。

 

つまり、銀行預金や株や債券などに同時に分散投資しているのを、さらに進化させたような、そしてより安全だと考えられるリスク分散ができるようになるということです。

 

 

そして、お金のことを心配しなくてよくなり、自分が生きる経済圏も自分で選べることで「お金」に対する不安から解放された社会では、今よりも大胆なチャレンジが可能になります。

 

著者によるとそのような社会では、「好きなことに熱中している人ほどうまくいきやすくなる」ということです。

 

合理性や資本対効果のような「これまでの価値」で、自分の行動を判断するのではなく、共感・熱狂・信頼・好意・感謝など、人間の「内面的な価値」に注目していけば大きなチャンスがあり、ここを狙っていくのがこれからの生存戦略だと言います。

 

 

面白いと思ったのは、これまでと逆に、金銭的なリターンを第一に考えるほど儲からなくなり、何かに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになる時代がくる、と述べられていることでした。私たちはもしかすると「転換点」の両方を経験できる時代を生きているのかもしれません。まるで幕末から明治に切り替わる頃のように。

 

内面的な価値が重視される時代では「オリジナリティ」や「独自性」、「個性」などが最も重要であり価値につながりやすいそうです。自分がとことん熱中できることを探して、独自性を追求していくことが、価値主義の時代においてうまくいくための近道になるそうです。これはある意味「趣味を極める」というようなことなのかもしれません。

 

自分が熱中できることを探すためには、「1日中やっていても苦痛ではないこと」を見つけるとよい、ということも述べられています。

 

そうやって見つけた情熱を深堀りして自分独自の価値を高めていくことで、何とでもなる。それが価値主義の時代だそうです。

 

自分なりの価値を磨き、自分独自の枠組みを作る、そのようなことが必要になってくる時代に私たちは何ができるでしょうか。

 

個々が自分にとって有利な経済圏を選べる、という意味では私たちにとって今よりも「優しい」世界が到来するように思えます。

 

その一方で、個を尖らせる必要が今以上に求められる世界は、私たちにとって今よりも「厳しい」世界が到来するようにも思えるのです。

 

 

 

 

 

3. まとめ

 

 ・ブロックチェーンによってこれからのビジネスや組織は「分散化」する

 方向に進み、既存の「境界線」は消えていく

 

・人工知能による「自動化」と合わせた「自立分散型」の社会が実現されると

 人々は働く必要がなくなる。そのような社会では人々の関心は内面の充実へと

 向かう

 

・価値主義の経済では、私たちがとことん情熱を傾けられることに集中することが

 結果として価値を生み出すことになる

 

 

〈今日の読書を行動に変えるための
 個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい

 

・今後の世界、社会の進む方向性に対する理解を深めて

 準備しておく 

 


2. 読んでよかったこと、感じたこと

 

・自立分散型の未来について知ることができた

 

・価値主義の時代の自分の生き方について考える機会を得た


3. この本を読んで、自分は今から何をするか

 

・自分が熱中できることを磨き上げて発信していく


4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか

 

・未来について今よりも確からしい予測ができるようになっている

 

・これから訪れる価値主義の時代でも何とでもなる強みを発見している

 

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この著者は、未来に対してとても深い洞察をされていると思います。前著『未来に先回りする思考法』も是非合わせて読んでみて下さい。

 

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ブロックチェーンについてはこちらもご覧ください。

 

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