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人口減少時代の不便を乗り越えるには? 『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』河合雅司 著

 

未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

 

 

 

身近な店舗やサービスの廃業や撤退が進むと困るのが高齢者だ。マイカーを運転できなくなれば、途端に行動範囲が狭まり、日常生活に支障が出始め、地方では、ちょっとした買い物でもバスを乗り継がなければならない事例も見られる。

 

こうした「買い物弱者」対策の切り札としてネット通販への期待は高まっている。

 

ところが、ネット通販の利用の伸びに合わせてドライバー不足が解決するわけではない。むしろ切り札としての期待が膨らむほど、物流の破綻に拍車をかけることになりかねない。

 

ネット通販への依存度が高まるにつれて、店舗やサービスが縮小・撤退し、ドライバー不足の解消がさらに困難になるという悪循環が続くことになる。

 

トラックドライバーはすでに高年齢化している。国交省の資料によれば、若年就業者の割合は低く、相対的に中年層の占める割合が高くなっている。2014年時点で40~50歳の占める割合は44.3%にのぼり、全産業の平均34.1%に比べて10ポイントも高い。

 

平均年齢でも、全職業が42.2歳なのに対し、大型トラックは47.5歳、中小型トラックは45.4歳だ。これでは、中長期に若手・中堅層が極端に少ない「歪み」が生じる可能性が大きい。

 

若手が参入しづらい背景には、長時間労働の割に所得額が低く、人材を集めにくい労働環境に置かれていることがある。

 

こうした状況にあって、ネット通販の拡大に伴うきめ細かなサービスを求められているのである。

 

 

いま困っているのは、ネット通販の品揃えやインターネット環境の整備の遅れではなく、運ぶ人を確保できないことだ。

 

これに対して別の省の官僚からは、「ドローン(小型無人機)」によって運搬すればよいではないか」という反論も聞かれる。

 

だが、これもNGだ。ドローンは運べる荷物の大きさや量にも限度があろう。日本中に大規模な数のドローンが飛び回る社会を想像して頂きたい。歩行者や走行中の自動車・電車・電柱にぶつかりはしないだろうか。ドローン同士が空中衝突したり、荷物が落下したりする恐れもある。

 

 

大学教授や民間企業の技術者には、「自動無人運転技術が確立すれば、配送の人手を確保せずに済むようになる!」という"頼もしいアイデア"を熱く語る人も少なくない。

 

 

仮に、近い将来、普及まで漕ぎ着けたとして、無人運転のトラック自体が荷台から個別の商品を選別して降ろし、エレベーターのない共同住宅の階段を持って上がり、玄関先まで運んでインターフォンを押してくれるわけではないだろう。

 

そうした技術を待つ間にも日本の高齢化はどんどん進み、「買い物弱者」は増えてしまう。

 

現在のような便利すぎる物流サービスは、いずれどこかで成り立たなくなることを、われわれはそろそろ理解する必要がある。

 

 

〈今日のコンテンツ〉

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1. この本はどんな本か?

2. 世の中は便利になり続けるのが当たり前という思い込み

3. テクノロジーは間に合うか?

4. まとめ

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1. この本はどんな本か?

 

数十万部のベストセラーになった本の続編です。前作では、日本の人口動態データの変動から予測して、「20XX年にどのような社会問題が発生するか?」を年代順に並べて例示してくれていました。

 

今作でも人口動態データをもとにした未来予測をされているという点では同じです。ただし第1作目よりも、人口減少によって私たちの身の回りの生活がどのように不便になっていくのかがより具体的に述べられています。

 

「20XX年にはこうなる」という書き方は今回はされていませんが、「望ましくない日本の未来の姿」を今のうちから知っておき、将来に備えるのに有用、という点では本作も同じです。是非、多くの方に読んでおいて頂きたい本です。

 

本書の目次から、いくつか小見出しをご紹介すると、

 

・亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる

 

・食卓から野菜が消え、健康を損なう

 

・東京の路線が縮み、会議に遅刻する

 

 

など、これらを見ただけでは直感的には「なんでそうなるの?」と思ってしまうような仮説もいくらかはあります。

 

ただ、それらの仮説は、私たち自身が自分で考え、そのような未来が実現されるのを避けるために行動を始めるきっかけとしては十分すぎるくらい役に立ちます。

 

著者も述べられていますが、この本で述べられているような深刻な社会問題を逆説的に「大きなビジネスチャンス」だと捉えることもできるでしょう。

 

 

2. 世の中は便利になり続けるのが当たり前という思い込み

 

今回は「ネット通販が普及し、商品が届かなくなる」という章から引用しています。引用した文章中にも書かれている通り、ネット通販の需要がますます増加していくのに対して、ドライバーの供給は全く追いついていません。

 

ドライバーの高齢化が進み、労働に対する報酬が少ないため、ドライバーになろうとする若者が減少しています。そして、そもそも新しく生まれる子供の数も減っています。

 

従って、今、私たちがAmazonなどのネット通販で享受しているような当日(翌日)配送とか、時間指定の再配達依頼なども今後は「遅延」が発生することが多くなるでしょう。ゆくゆくはこれらのサービスの縮小を余儀なくされたり、打ち切られることもあるかもしれません。

 

現状では、再配達の問題などをニュースなどで見聞きすることがあるとはいえ、まだそれほど深刻には感じられていない、というのが特に都市部に居住する大多数の方の認識ではないかと思います。

 

 

私たちのこれまで何十年かの人生を振り返ると、世の中はずっとこれまで「便利になる」方向に進んできました。今、この文章をお読みの方の年齢がいくつだったとしても、みんな例外なく、生まれた時よりも明らかに、生活は便利になっているはずです。

 

家電製品でもそうですし、移動手段や通信手段も圧倒的に進歩していますよね。

 

 

それをこれまで成りたたせてきたのは技術の進歩でした。18世紀の第1次産業革命の時代に蒸気機関が生まれた頃から、21世紀の現在では、人工知能だ、ロボットだというように、技術の進歩は現在進行形で加速しています。これからも私たちの生活や社会の利便性や効率を高める方向に推し進めていくでしょう。

 

ところが、そこに「待った」をかける出来事が起こりつつあります。それが「人口減少」です。

 

どんな技術も今のところは、それを制御する側の人間が必要です。ですから「人口は現状維持もしくは増加する」ことが、技術が社会の利便性を高め続けるための暗黙の前提条件となっていました。

 

 

そして「この前提条件が徐々に成り立たなくなる」ということに対して、これまで私たちはうすうす感づいてはいたとしても、あまり目を向けてこなかったのではないでしょうか。

 

「人口減少」の問題は「世の中は便利になり続ける」という私たちのこれまでの思い込みを壊しつつあるのです。

 

思い込みであった、ということに気づくことができたなら、それは、これから来る時代に合った「新しい考え方」を身につけていく下地ができた、と言い換えることもできるでしょう。

 

3. テクノロジーは間に合うか?

 

本書の著者は物流、ネット通販の配送におけるドローンや自動運転に対して否定的な意見を述べられています。確かにこれらが世の中に普及するまでには、まだ時間がかかるでしょう。

 

ただ、「NG」とそれらの可能性を切り捨ててしまっていることに対しては、反論しておきたいと思います。

 

引用した文章から推察すると、配送センターからたくさんのドローンが各家庭まで飛んでいくことを想定されているのかもしれません。数千~数万、あるいはもっと多くのドローンが、常時私たちの頭上を飛び回っていることを考えると、それは確かに危険だと思います。

 

ですが、わざわざ配送センターから荷物を積載したドローンを飛ばす必要はないはずです。例えば、マンションの前まで自動運転車のトラックで配送して、そこから各部屋のベランダまでドローンで配送する、ということだってできるはずです。

 

これなら、配送用のドローンが頭上を飛ぶのはマンション前の空域だけで済むはずです。

 

これは陸上で運び、最後に空中から運ぶという場合の例ですが、他にもAmazonは親機となる飛行船で荷物を運び、そこから子機となるドローンで荷物を配送する、という趣旨の特許を取得しています。

 

(参考)アマゾン、飛行船とドローンを活用した配送システムで特許出願

https://bit.ly/2l6QU5E

 

 この場合、空を飛んでいるのは無数のドローンよりもほとんど飛行船だけです。(もちろん墜落の危険性はあるでしょうが)。

 

また、引用文中で、「無人運転のトラック自体が荷台から個別の商品を選別して降ろし、エレベーターのない共同住宅の階段を持って上がり、玄関先まで運んでインターフォンを押してくれるわけではないだろう」と述べられています。

 

このことは「ラストワンマイル」問題と呼ばれています。ラストワンマイルとは「宅配の物流拠点から個人宅までの最終区間」のことで、平たく言うと、顧客までどうやって商品を届けるのか?という問題です。

 

いまだ、その多くを人力に頼らざるを得ない部分であり、再配達が発生すると途端に配送効率が悪化するため、物流業界各社が解決のために知恵を振り絞って取り組んでいる非常にホットな分野です。

 

この問題に対しては、例えば、前述のように自動運転車からマンションのベランダまでドローンを飛ばす、というのも解決方法の一つだと思います。また、例えばクロネコヤマトでは、「ロボネコヤマト」という、自動運転車が荷物を配送し、顧客は受け取り場所と時間を自分で指定して、自分で受け取る、というシステムのサービスの実証試験を行っています。

 

(参考)物流のラストワンマイル問題に技術で挑む──「ロボネコヤマト」が示す宅配の未来

https://bit.ly/2ydpF2C

 

これは発想の転換で、配送業者が荷物を玄関前まで運ぶのではなく、顧客が自分で受け取りに行く、という形でラストワンマイルの問題を解決しようとする取り組みです。

 

 

要は何が言いたいかというと、「やりようは色々あるはずなので、技術の可能性を頭から切り捨てるような過小評価はしないで欲しい」ということを申し上げておきたいのです。

 

 

ただし問題となるのは、それがいつ頃、広く一般に普及するのか、ということです。 これはどうなるか分かりません。

 

自動運転車やドローンが当たり前に利用されるようになるタイミングが、人口減少によるドライバー不足が顕著になるタイミングよりも早く訪れるのであれば、著者が懸念しているような問題は起こらないでしょう。

 

その一方で、上記のタイミングがもし逆の順序(人口減少スピードの方が技術の普及スピードよりも早い)で訪れるのであれば、その時は著者の予想される通り、日常生活におけるさまざまな「不便」が顕在化してくることになるでしょう。

 

 

「多少の不便は受け入れる」という心づもりを今からしておくことは大切なことだと思います。ですが、人口が減り続ける以上、「不便を受け入れ続ける」だけではジリ貧になってしまいます。

 

もし、シンギュラリティの仮説を信じるなら、技術の進歩のスピードはここからさらに指数関数的に速くなっていくことになります。

 

エンジニアにできることは、そのスピードが少しでも早くなるよう貢献することです。エンジニア以外の人にできることは、人口減少を少しでも遅らせるためのアイデアを考えて行動することです。

 

人口減少は、今後も私たちが日本で暮らしていく以上は、様々な分野の人がそれぞれの専門性を活かして真剣に向き合わなければならない問題だと思います。

 

否が応でも向き合わなければならないのであれば、これを「大きなチャンス」と捉えて乗り越えていきましょう。

 

 

4. まとめ

 

・これまでは「人口は現状維持もしくは増加する」ことが、

 技術が社会の利便性を高め続けるための暗黙の前提条件と

 なっていた

 

・ここからはテクノロジーの進歩のスピードと人口減少のスピードの

 戦いになる

 

・人口減少問題を乗り越えるためのやり方は色々あるはず

 可能性を否定せずに考えよう

 

 

 

 

〈今日の読書を行動に変えるための
 個人的チャレンジシート〉
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1.この本を読んだ目的、ねらい

 

・人口減少の結果、未来の日本に起こりうる出来事に

 ついて学ぶ

 


2. 読んでよかったこと、感じたこと

 

・今の自分の暮らし方に対して危機感を持つことができた

 


3. この本を読んで、自分は今から何をするか

 

・技術開発スピードを速くするための努力を行う

 

・本書で紹介されている人口減少の結果発生する問題を

 ビジネスチャンスと捉えて解決のためのアイデアを

 考えてみる

 


4. 3か月後には何をするか、どうなっていたいか

 

・希望を失わず、楽観的に、全速力で物事に

 対処することができるようになっている

 

・未来の姿を明るいイメージで上書きし続けて、

 それに向けた行動を続けている

 

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前作について書いた書評は以下になります。

www.reading-and-contribution.com

 

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